兵庫県西部で活動する労働者からの投稿を紹介します。
労働者に進むべき道を示す羅針盤
――レーニンの論文に学ぶ
過日、レーニン著『カール・マルクスの学説の歴史的運命』を再読した。同論文は簡潔な小品ながら、現代の我々に対して勇気と励ましを与える類稀なる論考であり、ここに改めて紹介したい。
本稿は、マルクス没後30周年を記念し、1913年3月1日付の『プラウダ』紙に掲載されたものである。レーニンは冒頭において「マルクスの学説の主要な点は、社会主義社会の創造者であるプロレタリアートの世界史的役割を解明したことにある」(レーニン『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分
カール・マルクス ほか』新日本出版社、199頁)とした上で、その後の「全世界の諸事件の経過」(同)がマルクスの学説をいかに確証したかという問いを立て、歴史を三つの時期に区分して考察している。
すなわち、第一期は1848年の革命から1871年のパリ・コミューンまで、第二期はパリ・コミューンから1905年のロシア革命まで、第三期は1905年以降の時代である。
第一の時期について、当初マルクスの学説は支配的な地位にはなく、「ひじょうにたくさんあった社会主義の諸分派または諸流派の1つ」(200頁)に過ぎなかった。当時は「ナロードニキ主義」(注)に似通った形態の社会主義が支配的だったが、1848年の革命によりマルクス以前の社会主義は打撃を受け、1871年のパリ・コミューンを画期としてそれらは最終的に死滅した。その結果、この時期の終焉とともに「自主的なプロレタリアの諸政党」(201頁)の誕生を見るに至ったのである。
(注)ナロードニキ主義とは、19世紀後半にロシアで活動した「ナロードニキ」(人民主義者)の主張のことある。彼らは、ロシアには「ミール」という「社会主義的要素」を持った農村共同体があるから、資本主義を避けつつ直接に社会主義に到達できると考えた。彼らは、ロシアの封建制社会に資本主義的工業が誕生していたことを知っていたが、資本主義的生産の歴史的役割を見ることができずに、「農村家内工業」(クスターリ)を「人民的生産」と呼んで賛美した。したがって、「ナロードニキ」たちは、資本主義社会に移行して後に無産の労働者階級が誕生すること、この労働者階級によって初めて、搾取の無い高度な共同体社会(共産主義社会)をかちとることができることを理解しなかった。
マルクスの時代にも、こうした「ナロードニキ主義」に似通った社会主義思想が多かったのである。
第二の時期は、社会主義政党が成立・拡大し、「マルクスの学説は完全な勝利をおさめ(た)」(202頁)時代である。マルクス主義は名実ともに普及したが、レーニンはここで「マルクス主義が理論的に勝利すると、その敵はマルクス主義者に変装せずにおれなくなるものである」(同)と指摘し、「内部的に腐ってしまった自由主義」が「社会主義的な日和見主義のかたちで生きかえろうと」(同)したことを指摘した。
これらマルクス主義を偽装する勢力は、「臆病にも『社会平和』(すなわち奴隷所有者との平和)や階級闘争の否認、等々を説教」(203頁)したのである。レーニンが「社会主義的な国会議員や、労働運動のさまざまな役員や、インテリゲンツィアの『同情者』たちのなかには、彼らの支持者がひじょうにおおい」(同)と叙述した当時の状況は、1913年の執筆から1世紀以上を経た2026年現在の日本における社民党、共産党、それらに従属する組合官僚や野党共闘を盲信する知識人(大学教授等)、市民派に酷似しており、驚嘆を禁じ得ない。
第三の時期については、ロシア革命につづいて、トルコ、イラン、中国へと革命の火の手が波及した。レーニンは「われわれはいまちょうどこれらの嵐の時代、そしてそれがヨーロッパに『はねかえって反射する』時代に生きている」(同)とし、「アジアにつづいてヨーロッパも動きはじめた」(204-205頁)と欧州労働者の闘争の例を列挙。
総括として、それまでの歴史によってマルクス主義の正しさが確認されたと強調し、「きたるべき歴史的時代は、プロレタリアートの学説としてのマルクス主義にいっそう大きい勝利をもたらすであろう」(205頁)という大局的な展望を提示して結んでいる。
いかがだろうか。
引用が多くなったが、これが『カール・マルクスの学説の歴史的運命』の要旨である。レーニンは以上のように時代を3つに分け、緻密な考察を行い、マルクス主義の歴史的な正しさを我々に噛んで含めるように教えている。我々はこのような古典的論考を繙くことで、マルクス主義の歴史的正当性を改めて確信することができるのである。
困難な時代にあって、マルクス主義を学び、実践せんとする労働者にとって、本書は力強い鼓舞となり、またマルクス主義を知らない労働者や社民党、共産党、市民派に騙されている労働者にとっては進むべき道を示す羅針盤となるだろう。全ての労働者・学生に、この不朽の名著を精読することを切に推奨する。
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