今昔職場物語
現金管理機トラブルでの管理者の態度
今となっては昔のことですが、もうすぐ年末で仕事も忙しくなるので、その前に忘年会をしようと云うことになりました。近頃、職場の仕事仲間で忘年会をするというのは珍しいのですが、数人が近くの居酒屋に集まりました。
中心になって人集めに動いたのはSu君でした。その彼と話していたら、憤懣やるかたない様子で、最近あった出来事を語ってくれました。
職場に現金管理機というのがあります。金銭の授受をしてくれる機械ですが、ここ最近、立て続けに故障しています。私が知っているだけで、ほぼ毎日続けて三回動かなくなっています。その度に修理業者の人が来て、機械を分解し、部品交換をしている姿が見受けられます。その時、精算すべき現金はどうするのかと云えば、取り敢えず封筒に入れておきます。その詳細を封筒の上に書いて、事務方に預けます。その後、機械が修理された時点で、事務方が現金管理機に納入します。
Su君によれば、数日前に、預けた現金に不足が出たと云われ、管理サイドから何度も何度も詰問されたそうです。「本当に間違いなくお金を封筒に入れたのか」。「入れました、間違いありません、と云うのは、Sa上司の目の前で、お金を勘定し、確認してもらいました、その後、封筒に入れたからです」。「ではどうしてお金が足りないのか」。「この前から現金管理機が何度も故障しているじゃないですか、それと何か関係があるのではないですか」。こんな遣り取りが延々と繰り返されたそうです。その為、本来の勤務時間が過ぎてしまい、何時までも帰れなかったと云います。
Su君は昔、工業高校を卒業して地元の大手金属会社に勤めていました。有名大学を卒業した研究者の下、彼らと一緒に働いていました。しかし、日本の鉄鋼産業の衰えと共に、新日鐵のような超巨大企業に吸収され、合併されて、彼が勤めていた会社は、名実ともになくなってしまったと云います。そこを退職せざるを得なくなり、その後、彼は、我が社で非常勤として勤めることになったのです。勤め始めてからすでに10年以上が経過しています。
さすがメカに強い彼の見立て通りでした。現金の不足は現金管理機の中で、当日のものが前日のものと勘定されたがために、問題が発生したものだと分かりました。詳しいことは機械音痴の私には分かりません、しかし、彼の現金勘定には一円の間違いもなかったと云います。
問題なのは、こうした事情を説明に来た管理サイドの例の人物です。Su君にことの事情をただ単に説明しただけで、行ってしまったそうで「疑ってすみませんでしたぐらい云えないのか」と彼は憤慨しています。普段、現場で作業ミスをしたら鬼の首でも取ったみたいにガミガミ言ってくるその人が、そんな態度だというので、彼の腹の虫は収まりません。
話を聞いていたみんなは「管理者は人を見ているからな、言い返してやれ」と云って慰めています。年末に向け、現場は忙しくなる一方で、人を人とも思わない管理サイドに、非正規の労働者は怒っているという話しでした。
(大阪・S)