HPで、「統一朝鮮国家の可能性」というメッセージが掲載されました。そこに2月に発行した『海つばめ』1321号参照という指摘があります。ここに、その記事を掲載します。

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2018年2月25日発行『海つばめ』1321号トップ記事紹介

五輪を舞台に〝世界は踊る〟
安倍は〝南北融和〟をなぜ憎む

 

北朝鮮問題や北朝鮮の核問題と関連して、朝鮮の平昌冬季オリンピックを舞台に、主として南北朝鮮の国家(金正恩天皇と文在寅政権)の主導で派手な〝外交〟戦が行われ、米日の〝外野席〟の大国も絡んで、てんやわんやの政治騒動が繰り広げられている。

一方で平和主義者、自由主義者や市民派、共産党などが、南北朝鮮の融和だ、トランプと金正恩の会談だ、平昌五輪をきっかけに「潮目が変わる」と希望的観測にふければ、他方で、トランプや安倍一派は、潮目は変わっていない、これまで通りの圧力路線でやるべきだ、金正恩が屈服して核放棄に転じるまでは会談とか圧力の後退とかはあり得ない、とわめいている。

なぜ憎悪するのか、しなくてはならないのか 

突如五輪をきっかけに始まった南北朝鮮国家の急接近、融和路線の展開にうろたえ、動揺したトランプや安倍は、金正恩にいい顔をするな、そんなことをしてもいいことは何もない、かつての「対話」路線とか、協調・融和の試みはすべて金王朝の時間稼ぎとなり、結局はその核開発・核武装の戦略を利しただけであって、核放棄の努力を失敗させてきたのだ、今は「あらゆる選択肢──つまり武力攻撃も含めて──でもって圧力を最大限に強めていくべきだ」、金正恩の方から頭を下げて「会談」を──もちろん、核放棄もやむを得ないと決意し、折れて──提起してくるまで、日米韓を中心に一致して圧力をかけ続けなくてはならず、ここで妥協したり、甘い顔をしたり、〝融和路線〟──これさえも問題なのに──ならぬ、〝宥和路線〟──譲歩路線、妥協路線──に転換してはならないと叫んでいる。

安倍らは南北の接近や融和の雰囲気に苦虫をかみ砕いたかに顔をしかめ、文在寅は「微笑み外交」などすべきではない、南北の融和などあり得ないし、あってはならない、金正恩と馴れ合ってもまた裏切られるだけだ、止めるべきだといらだつが、しかし南北の朝鮮国民にとっては、南北の接近と融合、統一は南北の労働者・働く者にとって、一つの〝悲願〟であって、他国がそれについてとやかく言ったり、反対する権利も資格もあるはずがない。

安倍らの南北融合に走る文在寅に対する焦りや反発は、朝鮮半島に統一された、強力な国民国家が再建され、登場することに対する、日本のブルジョアや国家主義者たちの警戒といらだちが見え隠れするのだが、彼らの自国第一主義の態度や言動はただ醜く、卑しいだけである。

東西ドイツの統一に賛成し、祝福したというなら、彼らが南北朝鮮の統一に賛成してもいいし、当然と思えるのだが、自らの利害が絡むと、それに反対するのであり、反対せざるを得ないのである。

ブルジョアたちはすでに第一次世界大戦後、レーニンの声に怯えて、またウイルソンの口を借りて、とりわけ後進国家の〝民族自決権〟を承認したのではなかったのか、とするなら、朝鮮国民の、あるいはクルド民族の〝統一〟になぜ反感や憎しみを持つのか、持たなくてはならないのか。

もちろん金王朝の存続を前提とするなら、南北朝鮮の統一はあり得ないだろうが、しかし南北朝鮮の(労働者・働く者の)接近や融和や融合や、統一さえにも反対する理由を、日本の、そして世界の労働者・働く者は持たないのである。

かつて東ドイツのスターリン主義体制の解体が、統一ドイツを生み出したが、近い将来、金王朝の崩壊が、民主的な統一国家を朝鮮にもたらす可能性もまた大きい。そしてそれが日本と統一朝鮮の労働者・働く者の接近や共同、共通の闘いと団結にとって大きな前進をもたらすこともまた明らかである。

悪党は金や習やプーチンだけでない  

北の核所有は許さないと叫ぶトランプや安倍らは、「核廃絶」もしくは核拡散防止という大義名分を掲げ、至極もっともに見えるが、しかし自ら強大な核兵器を所有しながら──あるいはその「傘」に、虎の威を借る狐よろしく安住しながら──核廃絶をいっても何の説得力も正当性もなく、そんな理屈で金正恩を納得させることができないのは当然である。

そして仮に金正恩のような弱小国に非核を強要することができたとしても、イスラエルや中国やインド等々への「核拡散」を阻止することができなかったことはどうなのか、なぜできなかったのか、しなかったのか。 米露が、英仏が、中国やインドやイスラエルや、日本さえも核兵器で武装していいというなら、北朝鮮がそうして悪い理由は何もない。

米日が北朝鮮に非核(核兵器廃棄)を強要したいなら、自らの非核を実行し、核兵器を一掃してから、また一掃する決意や確かな展望を示してから、そうすべきであるのは、コトの道理というものである。

自ら頭のてっぺんからつま先まで核で武装しながら、しかもトランプもプーチンも習近平もみな、核兵器の〝近代化〟だ、効率化=実践化だ、即戦化=小型化だと、ある意味で一層強大な核兵器保有国の地位を目ざしながら、北朝鮮の核保有を許さないなどと、まさに茶番の中でもとびっきりの茶番にすぎない。

あれこれの弱小国は強大国の横暴や圧迫や、強国による奴隷的支配を免れようと、対抗するに有効な核兵器で自ら武装することを決意するかも知れず、また北朝鮮はそうするのである。それが金王朝を守るためであるからといって否定しても、だからといって、金王朝国家に非核を武力でもって強要していいということには必ずしもならない、というのは、トランプ政権のアメリカもまた、自国を守るためと称して核兵器で武装しているからである、イスラエルなどには核武装を認めてきたからである。

アメリカが後援するイスラエルもまたアラブ諸国に囲まれ、国家滅亡の危機を意識して核兵器で武装するのだが、それを黙認しつつ、北朝鮮はだめだなどというのは一貫しているとはお世辞にもいえない。今さらのように、北朝鮮に核兵器を許さないというなら、中国にも、イスラエルにもインドにもいうべきだったのであり、あるいはむしろまず自らにこそ、そういうべきだったのである。

すでに北朝鮮国家の核兵器保有が既成事実になったとするなら、そんな国家を武力で攻撃するということは核戦争を挑発するに等しく、そしてそんな選択肢があり得ないとするなら、トランプにはすでに核武装した金正恩の国家を受け入れつつも、理性も道理もある民主的国家──それがどんな国家であるかは、ここでは厳密に論じない、というのは、トランプや安倍の国家も〝民主的〟国家だといわれているからである──に改革され、変革されることを期待するしかないのである、そして中国やイスラエルやインド等々にそうしてきたのだから、北朝鮮にもそうして悪い理由はないし、そうしたからといって間違っているということもない。

悪玉、善玉の問題ではない  

トランプや安倍は、政治や外交を論じるに、悪党や悪玉と、正義派や善玉という区別に立って議論し、政治外交を行おうとする(そして共産党も善悪の観念を持ち出して、政治的評価に変え、安倍らと同じ思考様式、つまり一種の観念論から出発する)

つまりアメリカファースト、日本ファーストで考え、政治を行うのが、善玉であり、正義であり、他方北朝鮮も中国も米国や日本の利益を損なうかに見える国家や勢力は存在そのものからして悪玉であり、不正義だというのだが、そんな理屈は第一歩から矛盾し、破綻している、というのは、北朝鮮も習近平の中国も、プーチンのロシアも、否、すべての〝国民国家〟、ブルジョア国家はみな根本的には自国ファーストであり、あるからこそ、そしてその限り、安倍らの概念によれば、善玉である──あるいは他国から見れば、悪玉である──、つまりは形や程度や特性が違いつつも、基本的に〝近代国家〟、国民国家、そしてブルジョア国家だからである。

国家とは抽象的、観念的な概念ではなく、歴史的、具体的な概念として国家であり、また歴史的な生産的、社会的な関係の総括として国家であって、諸々の階級関係、支配関係を除いて、その概念を規定することはできないのである。

安倍はトランプに追随して──あるいはその先兵として──、北朝鮮の時間稼ぎ外交、偽りの微笑み外交に惑わされてはならない、断固たる強硬外交、〝武断〟外交に徹することによってのみ、北朝鮮の核武装を阻止することができるのだ、と主張する。

彼らは思いあがって、北朝鮮の方から妥協させるべきであって、こちらからは間違っても譲歩や妥協をしてはならない、話し合いになど応じてはならない、交渉や話し合いは、「ただ北に核を断念させるためだけにやるべき」、あるいは「2トラック」路線(従来の言い方では、〝二股路線〟ということか)もダメだ、それまではただひたすら、動揺することなく、「制裁」や「圧力」を強めていくべきだなどと居丈高にはやし立てている、つまり正義と善は自分たちにあると盲信するのだが、基本的に、トランプも安倍も金正恩とそれほど違った立場に立っていないこと──実際には、アメリカなどが大国であるだけ、一層〝危険で〟、不当な立場であり得る──に気が付いていない、あるいは気が付かない振りをしているだけである。

金正恩が現在、アメリカと「コトを構えたい」といった意思を持っているとか、現実にそんな意思を実行に移そうと考えているといった証拠は何も無いのであって、また金正恩にその実力がないことも余りに明らかである。

切迫した〝国難〟が迫っているかにいう安倍は悪党であって、そんな発言で国民を扇動したいだけである、というのは、そんな悪しき扇動が安倍政権への国民の求心力や依存心を強めることをよく知っているからである。

労働者・働く者は金正恩だけではなく、トランプにも安倍にも挑発的な発言や脅迫的な言辞、軍国主義的策動や軍拡主義を直ちに止めよと要求し、悪者は金正恩だけでなく、またプーチンや習近平だけでなく、トランプも安倍もまた同様であるとして糺弾する。