「れいわ」の夢物語
――能天気な国債に頼る景気好転論
「れいわ」山本は、デフレの時代こそ積極財政=国債大量発行が経済の好循環をもたらすと吹聴している。
公約に並ぶのは、「消費税廃止」「奨学金チャラ」に始まり、「全国一律最低賃金1500円実現のため中小零細企業には政府が補填」「コンクリートも人もの国土強靭化」など、非正規労働者から中小零細業者、土建業者に目を配り、極め付けは「国民一人あたり月3万円給付」(ミニ・ベーシックインカム?)と、国民各層に満遍なく「お金配ります」というものだ。究極のポピュリズム政策によってすべての難題が解決するかの能天気さは、共産党の消費拡大による景気回復論や、金融緩和によるデフレ脱却を目指すアベノミクスをつまみ食いしたばかりか、流行のMMT理論の財源論も味方につけている。
それは、第一に政府と中央銀行は統合勘定だから、政府の国債発行残高の内、日銀保有分は帳消しされる。第二に、民間保有分も国内で消化されている限り「政府の借金は国民の資産」にすぎないといったもので、どんなに国債を発行してもプラマイゼロということに尽きる。これに基づけば、ケインズ主義を凌駕するような積極財政政策こそ「経済をまわし、経済成長すれば当然、税収は増えます」ということになる。
唯一の歯止めは、「れいわ」によれば「インフレ目標2%に到達するまで」で、到達後は「金融引き締めで増税まで必要な場合には、税の基本(応能負担)に還ります」と言うが、財政金融政策の“プロ”である政府日銀でさえ、歯止めの利かないインフレにつながることを恐れて、国債増発や金融緩和策を小出しにするにとどまっているが、「れいわ」の「政府の借金は国民の資産」の荒唐無稽さは、戦時国債が敗戦後のインフレで無価値になった歴史的経験によって証明済みなのである。
「れいわ」の積極財政のアジテーションは、物事の道理を知らない社会経験に乏しい若者などに受けているようだが、消費税廃止が5%に値切られているように、どの政策もまともに扱われることなく、“現実的な”政策を打ち出す野党の先鋒の役回りに終わっている。威勢のよさを利用しようとする共産党や小沢らが、かろうじて共闘相手と扱っているにすぎない。
筆者は「れいわ」応援団氏の、財政出動が経済の好循環をもたらし問題の全てを解決するかのツイートに、フリードマンの「ヘリコプターマネー」論と同じではないかと問いかけてみた。彼は、「目指すべき好循環」というだけで、夢を語るのがどうしてダメなのかといった反応だった。
彼には次のように答えておいた。《社会的な物質代謝は労働によって支えられており、「お金」はそれを媒介するのだから、媒介物が多くなれば確かに消費が増えて好景気になるかのようです。だが、それは事態の一面ではあっても完結していません。サラ金の借金でいい生活をしたら、その後は返済を迫られるように、財政出動=借金政策で先食いした分の埋め合わせを迫られ、近い将来の国民が負担する以外にないのです。企業が法人税で負担するとしても、その原資は労働者勤労者から収奪した利潤=労働の搾取に依存しているのであって、同じことです。》
確証のない願望に頼る危険性に気付いてほしものだ。
(東京・YS)