≪広島の現地から

 

連座失職で終わらせるな!——河井夫婦巨額買収事件

 

買収の罪に問われた参院広島選挙区の河井案里陣営の選挙管理者にたいして、最高裁は11月25日付で上告棄却の決定をした。執行猶予付きであれ連座制の対象者に対して懲役刑が確定したことになり、形式的な連座訴訟を経て、案里は議員失職することがほぼ確定した。

 

今回の事件は、ウグイス嬢に対し法定の上限額の2倍にあたる1日3万円を支払ったというものであった。他の陣営が何らかの形でこっそりと行っていることを、二重領収書といったあけすけな形で行っただけのようにも見える。しかしこの裁判を通じて、些細なこととは言えない事実が明らかになった。それは、当時法相であった夫の克行が陣営の総監督であったこと、その彼が県北への挨拶回りの際、制限時速80キロの中国道を秘書に命じて120キロを上回る速度で走らせたうえ、警護のために後続していた県警のパトカーからの注意を無視して走らせ続けたことである。

 

克行は、安倍の首相補佐官から菅の抜擢を受けて法相に成り上がったが、成り上がった途端に法の番人たる役柄など忘れさり、逆に役柄を利用して率先して法を破ったのだ。まさに安倍・菅政権のエゴイズム的体質の体現者だ。県警は、いまだにこの件について確認中と言うばかりで立件さえしていない。停車させて一発赤切符が当たり前だろう! 忖度どころか、相つるんだ権力自賛というものだ。

 

事件の本体である河井克行・案里夫婦による巨額買収事件について見ると、案里は執行猶予付きの、克行は執行猶予なしの有罪という流れが加速している。というのも検察は、被買収者である地方議員や後援者に対しては立件しないと約束することで、夫婦が有罪となるような証言を多々引き出しているからだ。司法・検察は、自ら法律化した司法取引に基づくこともなく、被買収者との“裏”取引で有罪に持ち込むことに熱心だが、そこにあるのは三権分立のポーズであり、ただの保身にすぎない。

 

この事件の根本的な問題は、発覚しているだけでも夫婦で合わせて県内の約百人、約3千万円もの現金が買収費用として支出され、しかもそれが自民党本部からの政党交付金で賄われた点である(案里陣営には破格の1億5千万円)。これは単なる買収ではなくて、労働者・勤労者の税金を元手にした買収であり、その私的流用なのである。かつて案里は県議時代に、藤田元県知事の知事選での議員への買収疑惑を追及してその名を馳せたのであったが、藤田の買収費用は少なくとも自分のカネであった。金権選挙の弊害をなくすための選挙の公営と謳われた政党交付金が、今回は堂々と買収費用に使われたのだ。

 

案里陣営だけではない。対立した自民党の溝手陣営も、有力県議の所属支部に50万円を振り込んだほか、複数の広島市議にも活動費名目での現金提供をもちかけていた(法に触れるということで止めになったが)。これらも溝手が受け取った1千5百万円の政党交付金から賄われたに違いない。これら多額の買収費用が政党交付金から支出されたとすれば、選挙の公営どころか、現在の自民党の政治支配はカネで買われたものということになる。安倍や菅の政治支配の正当性は根底から揺らがざるを得ないのだ。だからこそ、自民党本部からのカネの流れの解明こそがこの買収事件の根幹なのである。夫婦の両事務所がひたすら昨年の収支を不明とするのもそのせいだ。この買収事件は河井夫婦の議員失職だけで終わるものではない。

 

事の重大さに気づいてか、ただの忖度か、検察は自民党本部の強制捜索を放棄して恥じない。われわれ労働者は、まずは司法・検察に対して自民党本部への強制捜索を行ない買収資金の出所について明らかにするとともに、法に沿って被買収者への立件を行えと要求するが、それとともに政党交付金や供託金制度をはじめとする不平等な選挙制度をただちに廃止せよと要求する。 (広島   IZ)