「資本論を読む会」に参加しているMさんからの投稿を紹介します。

 

共産党のあきれたビラ

宮本顕治や不破哲三の発言を想起

 

 「資本論を読む会」終了後、共産党がロシアのウクライナ侵攻を受けて街頭で配布しているビラの批判をする。このビラには心底あきれ果てた。

 

ビラで言う。「旧ソ連の時代からロシアの覇権主義を厳しく批判してきたのが日本共産党です」、「旧ソ連もロシアも社会主義とは無縁」。どの口が言っているのか。

 

共産党はソ連・ロシアを「生成期社会主義」つまり「生成期」であろうとなんであろうとソ連を「社会主義」と規定したうえで、1968年のソ連のチョコスロバキアへの侵攻、1979年のアフガニスタン侵攻を単に「覇権主義」「大国主義」と批判してきたにすぎない。

 

 ソ連によるチョコスロバキアの侵攻の後に出版された「宮本顕治対談集」(新日本出版社、1972年)の中で、宮本顕治は、1956年にソ連のハンガリーに侵攻、人民を弾圧したソ連擁護の発言を再録しさえしている。

 

「ソビエトがハンガリー政府の要請で出て、暴動をおさえた、これを流血だという」、「当事者たちは、しかしそのなかに、明らかに暴動的方向、つまり流血騒ぎにもっていくような反革命分子がいた。」(65,66ページ)

 

共産党がソ連の残虐なハンガリー人民弾圧を支持・擁護してきた事実は隠せない。(詳しくは、林紘義著「宮本・不破への公開質問状―ハンガリー事件・スターリン批判・ポーランド問題―」参照)

 

不破哲三は1987年出版の「世界史のなかの社会主義」(新日本出版社)でソ連を「生成期社会主義」と規定したうえで書いている。

 

「社会主義というのは、経済のしくみ、社会のしくみのなかに、外国を侵略しないとか、軍備の拡大をやらないと社会が成り立たないといった原因を、もともともっていない体制です。だから、アフガニスタンのようなことは、社会主義の国が、社会主義の本来の立場からはずれたときに起きるのです」、「社会主義の国民が社会主義の立場を失わないかぎり、いろんなジグザグがあっても、やがてこれを直す力が働く」、「これを私たちは社会主義の『復元力』とよんでいます。」(184,185ページ)

 

不破はソ連を「社会主義」と断じたうえで「社会主義国」の単なる政策的誤りとしてソ連を「大国主義」「覇権主義」として批判してきたのにすぎなく、根本的批判ではなかった。

 

共産党はソ連を「社会主義」として散々美化してきた。「社会主義の国」が「本来の立場」を離れるとは何か。

 

ソ連の国家資本主義体制の矛盾がソ連のチェコスロバキアなどの侵略を生み出したのである。ビラでは共産党はあたかもソ連を「社会主義」と言ってきたことはこれまでまるで一度もなかったかのような書き方である。これは真っ赤な嘘である。

 

共産党はその綱領で、今のロシアなどを「社会の実態としては、社会主義とは無縁な人間抑圧型の社会」というがここにはどんな科学的経済的な規定も概念もない。ロシアなどの社会は社会主義ではないが、どんな社会なのか、資本主義なのか、全く不明で、どんな社会経済構成体なのかが一切わからない。

 

共産党のロシアのウクライナ侵攻を受けての今回のビラは欺瞞にみちている。

 

このビラで共産党は自公政権・安部は「北方領土」について、共産党のように「全千島の返還」を言わず「返還は『歯舞、色丹だけ』に後退」させてきたという。ロシア、プーチンに強硬な姿勢をとってきたのは共産党だけと自慢げに言いたいようである。

 

そもそも共産党、自民党などがいう「固有の領土」なるものがあるわけではなく、領土とは相対的なものであり、民族国家の形成とともに成立した歴史的に限界のあるブルジョアジ的概念にしかすぎない。共産党は右翼も顔負けのウルトラ民族主義者であり、共産党は領土問題ではもはや「極右」といっても過言ではない。

 

 

プーチンだけが悪か

アメリカやウクライナの政権が絶対的に正しいわけでない

 

今、マスコミでゼレンスキーが絶対的な善でアメリカなどウクライナへの武器供与・援助は当然で、プーチンだけが悪かのような報道で溢れかえっている。

 

確かにプーチンは悪い。だが、ゼレンスキーはロシア語の抑圧政策を取ってきて絶対的善とはいえないと説明して「読む会」散会しました。

 

「読む会」の帰りに、「ウクライナ侵略戦争―世界秩序の危機」(「世界」臨時増刊)を書店で見つけ買いました。ほとんどの筆者はプーチンを批判したうえで書いている。だが、この本の中からも見えるものがあります。

 

2014年の、ウクライナの親ロ政権を打倒した“ユーロマイダン革命”にアメリカが関わりオバマもCNNのインタビューでこの政策の関与を認めている。

 

対応したのがバイデンである。「アメリカは、ただ復活し、敵対するロシアを抑え込みたいのであって、ウクライナの反ロシア政権はそのための道具でしかないように見える」(71ページ)

 

「第二次世界大戦時、ウクライナ民族主義者がナチスと手を組んだことがあったのは事実だし、ゼレンスキーがロシアとの関係を重視する政党の活動を禁止したのも、2014年に親ロ政権が米国の支援を受けたクーデターによって倒され、ロシア系市民への弾圧が行われたのも事実だ」(14ページ)

 

「ユーロマイダン革命は凄まじいばかりの暴力であり、『親露か、親欧米か』などという、それまでのウクライナ政治の対立軸をむしろ吹き飛ばしてしまった。クリミヤ人やドンパス人は、自分たちがロシア語を使う権利や、ロシアへの帰属替えを求めたのではない。右派民族主義者による暴力や殺害を逃れてウクライナから逃げ出したのである」「特徴的なのは、革命派が、これら暴力事件を携帯電話で録画し、自らソーシャルメディアに盛んに公開したことである。これらは常識ある市民を恐怖のどん底に突き落とした。実際、ユーロマイダン革命中は、凄惨な死体の録画がユーチューブに溢れていた。」「ドンパスでの2600人の民間犠牲者を国際司法や国際世論は見て見ぬふりをしていた。」(49,50,51ページ)「言語法制によりロシア語話者の母語使用を厳しく制限した」(106ページ)

 

「2014年政変で成立したウクライナの現体制がファシスト的・人種主義的傾向を持つこと、東部ウクライナの住民に対する迫害(8年間にわたる戦争状態の中で人道上の危機が発生)や、労働運動弾圧、共産党非合法化の政策がとられてきたことはこれまでも指摘・報道されてきた」(208ページ)

 

ウクライナからの避難にあたっては、白人が優先でウクライナ兵が有色人種を力づくに押し戻している。アフリカ連合はアフリカ人を中心とする有色人種が差別を受けているとして声明を発表し、避難時の人種差別は国際法違反だと訴えている。(朝日、GLOBE・国連での南アフリカの演説)

 

「米国のグレナダ侵攻、パナマ侵攻、イラク戦争、ソ連のアフガニスタン侵攻など、核を持つ軍事大国が他国を侵略しその政権の転覆を図ることは、これまでも度々あった。イラクやパレスチナやシリアに関心を払わなかった欧米や日本の人々が今回ウクライナ支援のために大きな声をあげている状況は人種主義の表れだという指摘もある」(147ページ)

 

ソ連崩壊の後、アメリカ政権は東方にNATOを拡大させ、民族主義者を台頭させ、親ロ政権などを崩壊させ、欧米よりの政権を樹立させてきた。2014年のウクライナのユーロマイダン革命もそうである。

 

この「革命」で市民の死体の映像もあった。今のウクライナのブチャと同様の惨状である。ゼレンスキーもこうした残虐行為を行ってきた民族主義者と同じく民族主義を煽り立ててきた。

 

ロシア語の抑圧はまたロシア民族主義を挑発させてきた。NATO加盟を強行・実行しようとしたのもゼレンスキーである。ウクライナへのアメリカの武器供与は、昔は「軍産複合体」と呼ばれた武器産業を潤わせている。

 

ロシアのウクライナ軍事侵攻は徹底的に批判、糾弾されなければならない。だが、アメリカ政権、ウクライナ政権、ゼレンスキーが絶対的に正しく、善であるわけではない。彼らも多くの罪をおかしてきたのである。

 

「パレスチナのガザ地区ではイスラエルによる封鎖・空爆下でマリウポリのような事態はほとんど恒常的に繰り返されてきたと言ってよい」(206ページ)

 

今でも、イスラエルはガザ地区へ空爆し、ガザ地区のパレスチナ住民を人道危機におとしいれている。ガザ地区の空爆は子どもにも多くの犠牲者だしている。アメリカはイスラエルを支援し、この空爆を認めてきた。自由主義普遍的価値を説くアメリカのも厳しく問わなければならない。