介護問題に関する2つの投稿がありましたので紹介します。ひとつは介護の現場が非常に厳しいという生々しい現実を暴露するもので、もうひとつは医療・介護職場での労組の闘いの報告です。労働者党は介護問題について、2019年の参院選で「困難な介護問題の解決には共同体原理の適用以外にない」と訴えて闘いました。投稿紹介の後、労働者党の介護問題のパンフレットを紹介します。

 

投稿1)どうなる?介護保険制度

 

2023830日の、厚労省の社会保障審議会・介護給付費分科会は、「2040年には訪問介護事業所を約5000増やし、訪問介護員(ホームヘルパー)を約32000人追加確保する必要かある」といった試算を示しました。20年には約114万人だった在宅介護利用者は、40年には152万人に増加するといわれています。

 

ヘルパー不足は深刻で有効求人倍率は全職業の平均が21年、103 倍だったのに対し、介護の求人は364倍になっています。

 

高齢者の在宅生活を支えるヘルパーは減少を続け「最期まで在宅一といったケアが続けていけなくなっているのが現状です。

 

これまで1%前後のプラスを維持してきた介護労働者の入職超過率(常用労働者で割った入職率と離職率の差を示す)が23年の秋、初めてマイナスを記録(マイナス16%)したのです。——548000人が介護分野の仕事に就いたが61700人が離職。離職者が増加する原因は、何と言っても3K職場で、賃金は低く、雇用が不安定といったところにあるのではないでしょうか。

 

神戸市のkWユニオンでは、介護関連の労働者の交流会を定期的に行なっていますが、そこへ参加してみると、大変な状況の中で働いているヘルパーたちの声が上がっていました。グループホームで働く20代の男性は、「人手不足で、8日連勤や月12回の夜勤がしんどい。」また別の訪問介護の20代の男性は「9時、17時の基本勤務だが、早朝や夜の訪問の仕事を入れてかろうじて生活費を維持している。平均すると一日10時間ぐらい働いている。」と話していました。

 

交流会では、大阪市の特養で、組合を失敗も経て結成したという、頼もしい報告もありました。 (42年間の国労書記を経て、母親の介護の経験から、67歳で特養に就職)総職員300名中、パートと正社員計 9名で労組結成。地道に交渉を重ねているということです。私は登録ヘルバーで、移動時の困難さを報告しました。

 

2024年度の介護報酬は159%引き上げられました。(6年に一度の診療報酬と司時改定)2000年度の制度発足時から、1割負担の原則だった介護保険の利用料は、2015年には一定以上の所得の人は2割負担になり、2018年には、単身で年収340万円以上の人には3割負担も導入され、今後2割、3割の対象者が増やされようとしています。介護の社会化がうたわれた介護保険制度のもとで、介護難民といわれる人たちはさらに増えていきそうです。金持ちしか介護を受けられなくなるといったことが、現実のものとなろうとしています。

(兵庫・A)

 

投稿2医療・介護職場の2023年末の闘い

労組無視の賃金表改訂策動を阻止、勝負はこれから

 

医療・介護事業所を市内外に 30 数か所運営、パートを含む総職員 500 名を抱える職場の昨年末一時金交渉はクリスマス前の 12/22 に妥結、支給は正月目前の 12/28。一方、月 172時間労働の職員(2016 年までは一年契約の非正規だったが、労使交渉で無期雇用となる)138 名の受け取る一時金は基本給の 1.01 倍、平均 20 万円にも届かない。コロナ対策補助金がなくなる一方、新型コロナ感染は依然収まらず事業所閉鎖も相次ぎ上半期は赤字決算だ、「原資がない」との経営側を突き崩しての大幅譲歩は勝ち取れなかった。

 

マスコミ報道でご存知のとおり、介護職の低賃金は他の職種と比べ平均月7万円少ないと言われており、当職場でもそれが裏付けられる。138名には看護師も含まれるので介護職に限れば月給はもっと少ない。

 

現在の介護職給与表の一部を紹介する。

1号棒「132,500 円~142,500円」、2号棒「133,500 円~149,500円」・・・・25号棒「156,500円~210,500円」。なお入職1年目の賃金は1号棒、2年目の賃金は2号棒が適用される。公務員なら3か月で号棒がひとつ上がり、一年後は5号棒から始まる。

 

202310月から適用された県最低賃金は時給897円で、事業所の義務的月労働時間172 を乗ずれば月額154,284円。この額は22号棒「153,500 円~208,500 円」適用者でも最低賃金を下回る労働者が出る。2008 年作成の賃金表は 2019 年には最賃額に追いつかれている、と労組は指摘してきたが、ここ数年の最低賃金増額(労働者にとっては小幅だが)で全くの違法(最低賃金法)状態になった。

 

額の低さも問題だが、同じ号棒に〝幅〟があり、号棒が増すごとにその幅は大きくなり、1号棒で10,000円、25号棒では実に54,000円の差がある。そしてその差に関する客観的な根拠は明示されていない。

 

団交ではこの点について「他の事業所からベテランさんに来てもらうために入所一年目でも差をつけたいため」と口頭説明があった。労組側は、「前歴換算表を作成して、号棒適用を上げればよいだけだ、ただし、一つの号棒には一つの賃金額が対応する〝当たり前〟の賃金表に戻す必要がある」と指摘してきた。

 

賃金は労働条件の最も重要な要件であり、労資の敵対的利害を反映する。労働基準法第2条では「労働条件は労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」とあるが、実際は「絵にかいた餅」である。資本の支配する体制では資本側(経営側)が圧倒的に優位であり、労働者は「合法的」に不利な条件を飲まされることになる。賃金額決定についても、この第2条の「労使対等」は労働者の組織力や団結力、実力行使(ストライキ)の闘う態勢があって初めて「同じリング」に上がれる、そして初めて譲歩を勝ち取ることができる。

 

現行法上、就業規則の一部である賃金規定は労働者の意見を聞いたうえで、それが「賛成でも反対でも」に関わらず、労働基準監督署に届けられて受理されれば、職場の法律としてまかり通ることになる。

 

2008年の賃金規定は当時の経営側に「してやられた」のであり、まんまと監督署に受理され、その低賃金のもとで15年にわたり職員は呻吟を強いられてきた。

 

昨年12/13の団体交渉にて、最低賃金に抵触する賃金表改訂にむけて経営側具体案が配布された。介護職賃金表は1号棒「154,800 円~206,400 円」(時給900円~1200円)・・・40号棒「162,000 円~409,400円」(時給942円~2380円)。最賃を3円上回る低賃金、幅のある体系は相変わらず、16号棒「154,800円~311,400円」まで同一号俸での最低額は同じ、つまり最賃額を僅か3円!上回る時給900円を16年続けるのか!?

 

当然、労組が問題点を指摘すると、経営側は改定案を回収し、再検討を匂わせた。ところが後日、経営側が各職場(事業所)に改定案を配布し労働者代表の意見を集約しようとしていたことが判明。労組は職場委員会で検討し、12/19に「抗議及び申し入れ」(労組無視の対応は不当労働行為であり厳重に抗議、謝罪と労組との誠実な協議を求める。無視の場合は県労働委員会に不当労働行為として救済申し立てする旨)を行った。そして、冒頭の12/22団交席上経営側から「謝罪と回収」の言質をとるに至る。

 

労組の執行委員連絡網より、12/31A職場2120○○理事より回覧している賃金表を中止するよう指示あり」、B職場2123賃金表中止、再検討、新たな賃金表だすと事務者から言われた」、2127C職場「回覧はもともと中止を所長に求め、待ってもらっていた」、私 2327「事務、運転、調理、清掃の職種を一つの賃金表で済ませている、賃金額の低さをはじめ、2008年の賃金表の体系は変わっていない、つっこみどころ満載だ、一年後に改訂必至の短命賃金表だ、理事の方は、もし自分の子や孫が、こんな賃金表のもとで働いていたならどんな思いをもつのでしょうか?出入り業者に納入額を買い叩くのと同じ感覚で賃金を抑え、かつ恣意的に(基準や決まりに拘束されず、つまり説明できず、好き勝手に)賃金額を決めることができるように〝幅〟を大きくしておきたいと考えているように思います。それでは透明性も客観性も保証されず、認める訳にはいきません」、委員長「皆さん、来年も力を合わせて頑張っていきましょう」。資本の労組無視の賃金表改訂策動を阻止し、生活改善のために労働者の闘いは続く。 団結を固めて労働者の階級的な闘いを前進させていこう。(愛媛 FY)

 

 

労働者党「困難な介護問題の解決に向けて」パンフレットの紹介

(序文から抜粋)

https://wpll-j.org/japan/books/books1.html#senkyopannhu1

 

 現在、社会保障の問題、その中でもとりわけ「介護」の問題は今後10年、20年の日本の国家、国民にとって最大の、そして最重要な困難な課題の一つになっています。この問題を賢明に、そしていくらかでも正しく解決できるかどうかは、日本の近い将来の経済、社会、さらには国民の生活を大きく左右するといって決して過言ではありません。

 

この小パンフは、まさにそうした課題に応えるために、19参院選を前にして提出されるものです。私が、介護保険制度が発足した2000年以降、20年足らずの間に、時に応じて、また我々のなかでの議論中で執筆し6つの小論文を収めてあります。

 

しかし執筆された時は前後しています。冒頭の文章は、病を得て病院に入院していた昨年の暮、難しい介護問題に対する解決の道を明らかにしようとして記した、いわば我が党の基本的考えを、綱領的観念を素描したもので、その後の5つの小論は、その観念を一層具体的に、あるいは深めて展開したものです。基本的な観念を擁護しつつ、その上に立って、内容はそれぞれ別個の課題に応えるもので区別されます。

 

「介護の担い手を家族から社会全体へ」の合言葉と共に発足した2000年の介護保険制度から20年、介護問題の現実は解決に向かうどころか、一層の難しい状況に直面しており、少子高齢化のさらなる進行の中で、財政の面からも、それを担う“人材”の面からも崩壊に瀕しているのが現状です。

 

発足時の介護制度の総費用は3・6兆円でしたが昨18年には11兆円を越え、要介護認定者は約20年で、218万人から644万人の3倍に急増し、さらに敗戦後の三年間に、数百万の規模で生まれたいわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になる25年以降には介護問題は危機の頂点を迎え、費用の点でも担い手の面でも崩壊に瀕します。

 

何と25年には認知症の高齢者は700万(高齢者の5人に1人)という、空恐ろしい数字に跳ね上がると想定されています。介護の担い手は245万人が必要と算定されていますが、数十万も不足し、安倍政権も目先のことに場当たりに対応するだけで、なすすべも知らず、てんやわんや右往左往するだけです。海外から数十万の“人材”を導入し、依存するしかないと大騒ぎですが、これも確実な見通しのあってのことではありません。

 

 私たちはそんなときに、参院選に向けての闘いの中で、この問題に対する一つの解決策を提出し、労働者・働く者にその信を問うことにしました。

 2019年3月6日 林 紘義(参院選比例区候補)

困難な介護問題の解決に向けて

【目次】

一、困難な介護問題の解決――共同体原理の適用以外にない

二、問題だらけの見切り発車――2004年実施の介護保険制度

三、カネと賃労働で解決可能か――資本の下での〝高齢者介護〟の限界

四、破綻する現行介護制度――苦悩する介護労働者たち

五、介護問題の真の解決のために――〝介護の社会化〟を超えて

六、社会保障制度の真の解決の前提――労働の解放とその合理的、全般的な再組織、再編成

 

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