神奈川で『資本論』などの学習会を行っている「横浜労働者くらぶ」が5 月22 日に発行した「労働者くらぶ第41号」で、憲法第1条が「天皇」であることについて論じています。興味深い内容ですので紹介します。(担当)
「第1条 なぜ国民ではなくて天皇か」
憲法記念日の朝日新聞朝刊の読者欄に「憲法と私たち」という特集があった。その一つに上記の見出しがついた珍しい投稿があった。
「憲法の第1条に天皇の地位は『主権の存する日本国民の総意に基づく』とあることが、私はずっと気になっていた。国民の総意と言うが、私はこれまで一度も天皇制についてどう思うかと問われたことはない。…何年か前に憲法学者の講演を聴きに行った。『なぜ憲法の第1条が天皇なのか』という私の質問に『戦争の反省から、まず天皇についてしっかり定めておくことが大事と考えたから』と答えがあったのだが、物足りなく感じた。天皇よりまず国民が大切なのではないだろうか。…まるでタブーのように天皇制について誰も気さくに語り合わないことがかえって薄気味悪い。」(無職
愛知県 79 歳)
★「戦争の反省」は本当になされたのか?
珍しいというのは、自民党でさえ政党活動費の公表が「政治活動の自由」の制限になるというほどの、この“自由な”国において、このような天皇制についての投稿にめったに出会わなかったからである。この筆者の意見は全く当然である。民主主義の、国民主権の国の憲法の初めに、どうして国民ではなく天皇が来るのか?これでは、日本の主権者は国民ではなく天皇になってしまうではないか、投稿者は、そう思っているのである。
それに対して学者先生は、「戦争の反省から、まず天皇から定めた」というのであるが、一体その反省とはどうゆう反省だったのか?
あの戦争が「天皇の名」においてなされたことは誰でも知っていることであり、天皇は神聖不可侵の絶対的な主権者だったのである。その彼は、敗戦が明確になってから2年間も戦争を継続し、それによって東京大空襲、沖縄戦、広島長崎の原爆投下を招き、何百万の人命を犠牲にしたのである。
天皇の責任は明らかだ。こうゆう意見に対して、昭和天皇は軍部ファシスト
や資本の傀儡にすぎず、本当は平和主義者だったとして天皇を擁護する意見が、マスコミや言論人によって喧伝されている。しかしこのような天皇弁護論は、少し歴史を紐解いてみれば、全く事実に反することがわかる。
戦前の天皇は積極的に内閣の人事に口出しし、少なくとも敗戦の色が濃くなるまでは戦果を喜ぶ好戦論者であった。仮に彼が軍部の傀儡であり平和主義者であったとしても(事実ではないが)、統治権の総攬者であると憲法で規定されている本人が、退位や譲位もせずに戦前と同じ天皇の地位に留まるというようなことは、恐るべき厚顔無恥、道徳性の無さと言えるのだ(第1次、第2次世界大戦後、敗戦国の君主は退位どころか君主制そのものが崩壊している)。
企業のちょっとした不法行為や不祥事でも会長や社長が引責辞任するのを考えてみれば、いかに昭和天皇が恥知らずな存在であったかが分かる。学者先生が「戦争の反省から」というならば、あの戦争の最高の責任者としての天皇の責任こそ問われなければならないのである。
★民主社会においては君主制は矛盾である!
一体だれが“反省”したのか?少なからぬ国民は、もう天皇のための戦争は沢山だ、天皇もいらないと反省した。ところがソ連をはじめ連合国の多くの、また少なからぬ世論の天皇制廃止論を無視して、天皇制を存続(昭和天皇の退位すら求めず)させたのは、天皇制に戦後支配の利用価値を見出していたマッカーサーであった。
自民党は、現在の憲法は押し付け憲法であるから自主憲法に変えねばならないとしているが、この象徴天皇制については、押し付けられたとは感じていないらしい(よくぞ残したと喜んでいる)。そもそも民主主義(議会制)と君主制(封建制)とは水と油であり、立憲君主制といったものは両者の妥協の産物、矛盾そのものなのだ。
一体、天皇とか皇族と言ったものは、我われと同じ国民なのかどうか、一般の国民を“民間”と呼ぶ以上、天皇や皇族は特別の存在、聖家族であるのは間違いない。フランス革命の国王裁判において、ジャコバン党のサン・ジュストは、市民社会において国王はその存在自体が悪である、と断罪した(そして断首された)。矛盾は解消されねばならないのであり、矛盾だらけの天皇制も消滅するのが歴史の必然である。
★日本資本主義の帝国主義化は天皇制イデオロギーを強化する!
国会では、またまたくだらない皇位継承の議論が始まるようである。 自民党は皇位の安定的継承を目指すというが、男系男子か女系天皇でもいいのか、女性皇族は結婚で皇籍を離れるか否か、旧宮家の復活はどこまでか等々、馬鹿げた議論が繰り返されることになる。
驚くべきことに国会の全政党が、天皇制の存続を前提に、国民主権もそっち抜けにして、いかにして皇位を継承させるかを議論しているのだ。戦前から天皇制の廃止を主張してきたマルクス主義の(エッツ!)日本共産党は、現憲法を絶対視し、女性天皇を認めたうえで、天皇制の存廃については将来の「国民の総意」によるとして大衆追随主義(いつものことだが)に堕している。
国民の多くは、明日、天皇制が廃止されても 戦前と戦後の変化ほどの関心も示さないだろうが、しかし、軍事予算は前年比 16%増の7兆9千億円となり、日本資本主義の帝国主義化がすさまじい勢いで進んでいる今日、天皇制イデオロギーの果たす役割はますます必要となっている(戦前の轍を踏むな!)。
日本の労働者は、天皇制の強化に断固として反対すると同時に、その策動を強める日本帝国主義に反対して闘わなければならない。(K)
「横浜労働者くらぶ」学習会案内 ― 6月の予定
◆「資本論」第1巻学習会
・6 月26 日(水)18 時 30 分~20 時 30 分 / 県民センター703 号室
*第13 章第 1 節「機械装置の発達」から第第 3 節「機械経営の発達」まで学習します。
◆「資本論」第2巻学習会
・6 月 12 日(水)18時30分~20時30分 / 県民センター703 号室
*第 7 章「回転期間」から第9章「前貸資本の総回転」まで学習します。
◆レーニン「カール・マルクス他18篇」(岩波文庫) 学習会
・6 月19 日(水)18時30分~20時30分 / 県民センター703 号室
*論文「われわれの革命について」他論文を読みます。
横浜労働者くらぶ連絡先
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