読者からの投稿を紹介します。(担当)
「新しい戦前」の危機が深まっている
――「バーゼル宣言」から労働者が取るべき立場を考える
高市による台湾有事発言や武器輸出規制の緩和などを背景に、日中帝国主義間の対立は、近年いっそう激化しています。
中国は「世界の工場」と言われるまでに発展しましたが、次第に国内の過剰生産が見え始め、それを補うために盛んに海外へ進出し、「対外直接投資」を急速に増やして行きました。その結果、海外の労働者からも労働を搾取し利潤を拡大する「帝国主義」といわれる資本主義(中国は「国家資本主義体制」です)に発展して行きました。この「帝国主義」への成長は、同時に、海外に築いた権益を守り、さらに拡大するために軍事的な進出を強める結果になりました。中国は、東南アジア南沙諸島海域を自国の領土だと主張し、地下資源の調査採掘を行うために、強大な軍事力をバックに岩礁を基地化したり港湾化したりしています。
日本もまた、世界的な「資本輸出大国」になり、とりわけアジアの労働者から、長年にわたって労働を搾取し続け、2025年の「第1次所得収支」(海外子会社を通じて親会社に入る所得=搾取した剰余価値)は前年比4・7%増の41・6兆円にもなっています。このように、日本もまたアジアの覇権を争う帝国主義国になり、台湾有事になれば馳せ参じ、中国と争う覚悟を固めています。
それゆえ、軍事強国化をめざす高市政権は、軍事への投資が「経済成長」になると国民を誤魔化しながら、軍事・外交・経済の各分野において「戦時体制への準備」を進めているのです。まさに「新しい戦前」と呼ぶべき様相を呈しつつあります!
これに対し右翼勢力は、「左翼は事あるごとに『戦争が起きる!』と騒ぐが、実際に起きたためしがないではないか」と揶揄します。しかし現在の情勢は、もはやそのような軽口で済ませられる段階は越えられつつあります。
では、戦争――帝国主義戦争――に直面したとき、我々労働者はいかなる立場を取るべきなのでしょうか。その基本的な指針を与えてくれるのが、いわゆる「バーゼル宣言」です。
インターネットで「バーゼル宣言」と検索すると、廃棄物の越境移動を規制する「バーゼル条約」が表示されますが、今回取り上げるものとは無関係です。本稿で扱う「バーゼル宣言」(以下、宣言)は、1912年に開催された「第2インターナショナル・バーゼル大会」で採択されたものであり、帝国主義戦争の切迫を前に、国際社会主義運動が確認した原則的立場を示す歴史的文書です。
この宣言は、「戦争に反対する闘いのための基本方針」(ウラジーミル・レーニン『帝国主義論』光文社古典新訳文庫269頁)として、「戦争勃発の危機が差し迫ってきた場合、関係各国の労働者階級とその議会代表は・・・戦争勃発を阻止するために全力を尽くさなければならない」(269~270頁)ことを明確にしています。
さらに、戦争が阻止できず勃発してしまった場合には、「戦争を早期に終結させるため断固立ち上がること。全力を尽くして、戦争によってもたらされる経済的、政治的危機を、民衆決起のために最大限活用」し、「資本家階級支配の打倒を促すことに尽力する」(270頁)と決定しました。
加えて宣言は、「大会は、すべての国々の労働者がプロレタリアートの国際的な連帯の力を発揮し、資本主義的帝国主義に対抗することを求める」(277頁)、「プロレタリアは、資本家階級の利益、王朝の野心、秘密条約の栄光などのためにお互いに撃ち合うことは犯罪であると感じている」(278頁)と述べ、国境を越えた階級的団結を強く呼びかけています。
そして最後には、全労働者・社会主義者に対し、戦争への抗議の声をあげること、大衆デモ行進を実施すること、労働者が手に入るあらゆる手段を活用すること、政府に対して平和などを求める労働者の意志を不断に示すことを呼びかけました。それによって、資本主義世界に代わる「民族間の博愛と平和が横溢するプロレタリア世界」(280頁)を示すよう訴えています。
実際に第一次世界大戦が勃発すると、レーニン率いるボリシェヴィキはこの立場を最後まで貫き、帝国主義戦争反対と自国支配階級(ツアーリというロシアの封建的君主制)打倒の闘争を通じて革命を勝利させました。
しかし他方で、多くの社会民主主義政党は、この宣言を踏みにじりました。
例えば、ドイツ社会民主党は戦時公債に賛成し、帝国主義戦争を自国ブルジョアジーとともに支持しました。ロシアではプレハーノフが「祖国防衛」を掲げ、戦争協力へと転落しました。彼らは、自ら確認したバーゼル宣言と労働者階級を裏切ったのです。
しかし、だからといってバーゼル宣言の意義が失われたわけではありません。むしろ、戦争の可能性が高まる現代においてこそ、我々労働者がいかなる立場を取るべきかを示す重要な原則として、その価値はいっそう明確になっています。
戦争が現実味を帯びると、「労働者の味方」を名乗りながら、「現実的対応」や「国益」を理由に原則を放棄する勢力が必ず現れます。
かつてはドイツ社会民主党やプレハーノフ、今日では社民党や共産党、立憲などです。沖縄の基地反対闘争を裏切ったり、緊急時の自衛隊活用(戦争行為)を容認したり、安保法制を容認したりしているではありませんか。
バーゼル宣言は、そのような勢力の欺瞞を暴露し、労働者が進むべき道を照らし出しているのです。真の世界平和を実現する道は、自国支配階級の利益や「国益」を守ることでも、ましてやブルジョア政府に平和を懇願することでもありません。
帝国主義戦争は「自衛戦争」の名目で始まります。戦前の日本の軍部も、欧米列強からアジアを守ることを旗印に、また「自衛」を名目にして、中国や東南アジアへ帝国主義的な侵略を敢行していったことを忘れてはならないのです。全ての帝国主義戦争は「自衛戦争」の名目で始まってきた歴史があり、今後もまたそうなるでしょう。個人的に「私は騙されない」と思うことはもちろん必要ですが、それ以上に必要なことは、戦争を引き起こす帝国主義そのものを打倒するために、国境を越えて労働者が団結し、闘うことなのです。これこそが、労働者の進む唯一の道なのです。
なお、このバーゼル宣言は、光文社古典新訳文庫『帝国主義論』に収録されているほか、以下のサイトで無料で読むことも可能です。
http://redmole.m78.com/bunko/kisobunken/teikoku11.html
全ての労働者に呼びかけます。
この宣言を学び、血肉化し、再び繰り返されようとしている大戦争を阻止しましょう。戦争にひた走る日本帝国主義を打倒しましょう。「民族間の博愛と平和が横溢するプロレタリア世界」(高次共同体社会=共同労働社会)を実現するために、今こそ立ち上がりましょう。
(労働者H)