介護現場での休憩時間獲得の闘い 
――「食事介助中の食事は休憩とみなす」だって?

 毎月ATMで給料を引き出す時刻が遅くなり手数料(消費税も加算)代がバカにならない、少ない給料が目減りするのはいやだ、との訴えが介護職場の労組員よりあった。

 診療所職員は患者さんがいない時間帯(午前診と午後診の間)に1時間取得してきた。もちろん点滴が長引いたりすれば看護師等スタッフは休憩開始時刻を遅らせて1時間の休憩を確保するのは常識であった。労組役員の私も診療所勤務なので、休憩時間に外出しATMで給料を引き出すので、手数料を払うような「もったいない」ことなど経験がなく、当初は事情が理解できなかった。

 よく聞いてみると、問題はATM利用時間帯のことでなく、休憩そのものが与えられていない(9時間連続勤務)ことだった。介護事業所では利用者さんを9時頃自宅に迎えに行き、体操やゲーム、食事や入浴の介助等を行って16時頃送り届ける。外来診療部門とは違って勤務時間中は常に対応すべき対象者がいて一斉に休憩をとれないが、交代で取得する仕組みすらないのはどうしたことか。さっそく年末団体交渉の議題に加えることになった。

 経営側の言い分は「食事介助しつつ職員も同じテーブルで食事をしている、仕事でもあり休憩しているとも言える」「交代要員を雇うだけの経営状態ではない」。労組側は「嚥下障害を気遣って食事介助をしている時間帯は労働時間である。時間的にも場所的にも労働から解放された状態が休憩である。労基法の趣旨でもある」「経営難を理由に法違反が許されるのは大間違い」と反論。元共産党員でもあった専務理事は「法とは権力が人民を押さえつけるためのものだ、そんなものに依拠して要求するな」と言い出す始末。勝負あったである。

 「本日は平行線のままなので、次の議題に移ります。ただしこの件については労働基準監督署に行ってお知恵を拝借してきます」という私の発言に専務理事は大慌て。「ちょっと待ってくれ、自分の責任で休憩時間を確保できるよう介護職場長に指示するから監督署には行かないでくれ」。小心者の経営者としてはブルジョア法が怖いのである。ものは使いようである。   (愛媛 吉)