労働の解放をめざす労働者党ブログ

2017年4月結成された『労働の解放をめざす労働者党』のブログです。

外国人労働者

技能実習制度が廃止される!?

技能実習制度について政府有識者会議での検討の中間発表がありました。

『海つばめ』1449号でそれを批判する記事を掲載しましたが、紙面の都合で一部省略した編集でしたので、このブログに全文掲載します。

 

技能実習制度が廃止される!

再び三度〝欺瞞〟を重ねるのか

――政府有識者会議の中間発表を批判する――

 

はじめに

 

 「技能実習制度」(1993)が始まって30年、ここにきて漸く「見直し検討」するとして、政府有識者会議が中間報告を出した。果たしてこれは見直しとなるであろうか?

 

 かつての「研修制度」を見直すとしてできた「技能実習制度」は、さらに劣悪な労働環境を生み出し、今や大きな社会問題となっている。

 

 最低賃金以下の賃金、ぶっ続けの長時間労働、逃亡防止と称したパスポートや貯金通帳の取り上げ、 相次ぐ賃金の未払い、粗末な住居への詰め込み、怪我など労災補償の無視、日常的な暴力・パワハラ、果ては〝強制帰国〟、そして相次ぐ〝失踪〟、「送り出し機関」への多額の借金、管理団体による中間搾取と不正、その例は数えきれぬ。

 

 欧米からは「人身売買」「奴隷労働」と揶揄され、資本側からも強い要請―さらに長期に渡り雇用(搾取)したいもあり、漸く腰を上げた。以下、中間報告を見る。

 

1 「人材確保と人材育成」、まだ「育成」にこだわり続け理由は何か

 

「技能実習制度」は『発展途上国への人材育成を通じた国際貢献』を名目としながらも、実質は人手不足の企業への安価な労働力の提供(5年間の期限付き)であったのだが、政府は一貫して「人材育成、国際貢献」だとしてそのことを認めてこなかった。ここにきて漸く、新たな制度の目的として「人材確保と人材育成」を打ち出した。誰が見ても明らかな労働力の確保(人材確保)を認めたわけだが、それならただそれだけを目的とすればよいものを、再び三度「人材育成」と付け足した。そこにこだわる理由は何か?

 

 それは、資本側からの強い要請―「転職の自由」を認めさせない―のためだ。それを認めると、技能実習生は当然より賃金の高い職を求めて転職していく。そうなると最大の受け入れ側である中小零細製造企業、農業、建設土木、裁縫、清掃、介護、小売り業などは、「管理団体」に高い金を払ってせっかく手にした貴重な労働力を手放すことになる。また、最低賃金の高い都市部ヘと労働力は移っていくであろう。

 

  「人材育成」と言うことにすれば、名目上だが、一定の技術・技能を学び身につけるためにはある程度長期の期間(例えば3年とか4年とか)雇うことができる。そして期限が来たら、また新たに同様の労働力を雇い入れれば良いのだ。

 

 雇われた技能実習生も、これまた名目上だが、身につけた技術・技能を母国へ持ち帰るために長期に渡って日本に滞在するわけにはいかない。妻子を帯同したり、永住などもってのほかだ。例えば現「技能実習制度」も、3年働いたら一旦帰国し、さらに来日して同職場に2年働けるとなっている。これは資本の雇用延長の要請に応えたものだが、3年で身につけた技能・技術を母国へ持ち帰り活かす、さらにそれらを高めるために希望すれば同じ職場でもう2年学ぶという面倒くさい仕組みだ。現場を知らない官僚達が知恵を絞って考え出しそうなことだ。

 

 筆者は、空港の清掃やスーパーのレジ打ち、野菜の箱詰め、卵焼き作り、ゴミ収集などに従事する技能実習生を知ってるが、一体そこでどんな技術・技能を学べというのか。彼らのほとんどは単純労働に従事しているのである。

 

 中間報告では「転職の自由」ではなく、「転籍の自由」を認めるとしているが、それが人事異動のことか出向のことか、その具体的内容についてはまだ明らかになにっていない。また「転職の自由を緩和する」とだけ言ってるが、様々な制限を付けて実質それを阻止する答申が出るに違いない。

                                         

2 さらなる長期雇用のために「特定技能制度」と連結させる?

 

 「特定技能制度」は、「技能実習制度」(68業種)の後で出されたものだ(2019)。仕組みは複雑だ。「技能実習制度」が「発展途上国への人材育成や国際貢献」を謳うのに対し、「特定技能制度」は「人材を確保することが困難な産業分野に置いて、一定の専門性・技能を有し、戦力となる外国人を受け入れて人手不足を解消する」として、初めて〝公に〟外国人労働力の受け入れを認めた。

 

そして1号と2号とに分け、1号は〝連続して〟5年、2号は上限なし、それぞれ〝同一の業種であれば〟転職も認めた。また2号は配偶者とその子との家族帯同も可能となった。但し「一定の専門性・技能を有し」とあるように、技能試験と日本語能力試験(4)に合格する必要がある。

 

 「特定技能制度」では、職種がぐんと少なくなる。1号は人手不足がより深刻とされる特定産業分野12業種(介護、ビルクリーニング、建設、自動車整備等々)で、2号は建設業と造船・船用工業のみである。

 

  しかし、「特定技能制度」は遅々として進んでいない。技能実習生が約37万人いるのに対し、特定技能の方は僅か38万人(282021)である。日本語検定がネックなのだ。N4(15の下から2番目)は基本的な日本語を理解する程度の試験だが、漢字を含む文章を読め、日常会話ができることか条件だ。来日前に母国で日本語を学んできたとはいえ、ひらがなを読むのが精一杯で、漢字などは全く書けない。中には五十音さえ正確に書けない者もいる。

 

 特定技能生の8割は技能実習生から移ってきている。働きながら相当努力した者たちだ。「特定技能制度」は技能実習を終了した労働者をさらに長期にわたって雇用するために(さらに5年、計10年間)考え出されたが、政府の思うようには進まなかった(政府目標345万人)。謂わば失敗作!である。

 

 資本側からは「せっかく5年働かせて戦力となったのに、5年で帰国させなければならない」「もっと長期にわたって働かせたい」という強い要請がある。

 

 有識者会議はこの要請にどう応えるであろうか。「技能実習制度」と失敗した「特定技能制度」とをどう調整するか、職種の差異をどうするか、労働期限をどこまで延長させるか、転職は?おそらく新制度はそれらを折衷することになるだろう。

 

 例えば、「技能実習制度」と「特定技能制度1号」を結びつけ、68業種に拡大し、後者の検定をもっと容易なものにすれば、最低10年は雇うことが出来る。しかし、そんなことをしたら、問題だらけの「技能実習制度」をさらに長期にわたって引き延ばすと言うだけのことである。

 

 こんな面倒くさいことはやめにして、一層自由に自由なだけ働けるようにしたらどうか。そして妻子帯同も永住も可能にしたらどうか。

 

 すると政府は驚き顔で言うであろう。「そんなことをしたら莫大な社会保障費や教育費、住宅が必要になる」「日本の労働者の職が失われる」「日本人との軋轢が起きる」等々。そして旧安倍派の反動的連中も「古来より続く、天皇を頂く単一の大和民族の伝統や文化が失われる。〝血統主義〟は守らねばならぬ」と叫ぶのである。

 

3 暴利を貪る「管理団体」制度は廃止すべきだ

 

 中間報告は、「管理団体」については現状のまま維持する。但し「厳しく適正化する」とした。これはひどいことだ!

 

 先に述べた実習生への様々な仕打ちは、政府認可の「管理団体」こそがそれを防ぎ、指導し、実習生の労働環境や人権を守るべきものである。しかし、それをしている「管理団体」はひとつも無い。「非営利団体」でもある「管理団体」はまさに暴利を貪っている。なので大小含めて全国で32百も乱立するのだ。

 

 各国の「送り出し機関」の彼等への過剰接待、リベート、紹介した企業からの前貸金(1人当たり約50万円)、義務づけられた1ヶ月の日本語研修費及び住居費(1人当たり約10万円)、管理費と称した紹介料(1人当たり月約3万円×5)、一体どこが「非営利」なのか。しかも、斡旋した企業を「管理指導」すべき立場にありながら、企業の不正を見過ごすどころか、一緒になって〝強制帰国〟に手を貸すなど完全に企業側の出先機関である。

 

 愛知県一宮市に本部を置くA「管理団体」は、今まで4000人以上の実習生を斡旋したが、実習生にありとあらゆる暴挙を働き、裁判沙汰にもなり、果ては2億円の脱税を告発され、政府認可取り消しとなった。

 

 彼等の「もうけ」は全て斡旋した企業から支払われる。つまり、技能実習生から搾取した利潤の一部だ。なので企業主たちは「最低賃金(或いはそれ以下)で給与を支払うのは当たり前のことだ。そうでなければ技能実習生を雇う意味が無い。何も文句を言われる筋合いはない」と平然と言うのである。ある「管理団体」のボスも、「殴ってでも蹴ってでも、彼等に言うことをきかせろ」と暴言を吐く(これは筆者が実際に耳にした言葉だ)

 

  有識者会議はこうしたことを知りながら、「管理団体」制度の廃止を謳わない。有識者たちは政府や資本の要請に如何に応えるかの「見直し」に従事しているのであって、決して技能実習生の立場に立って見直しをしているわけではない。

 

4 「技能実習制度」や「特定技能制度」は直ちに廃止せよ

 

 政府有識者会議の「見直し」はまだ中間報告の段階で、その一部の骨組みだけが発表されたに過ぎない。「技能実習制度」に代わる新たな制度の名称も全体像も明らかになっていない。

 

 ただ言えることは、「技能実習制度」は日本の非正規労働者以下の賃金と劣悪な労働条件の下に、母国の「送り出し機関」に多額な借金(100万円、日本の約2千万円に相当する)を背負って来日し働いていることだ。しかも転職は許されないので、借金を返済し、残してきた家族に十分な仕送りが出来るまで、その企業や雇い主の下で働かねばならない。どんなに無理難題なことでも、どんなに劣悪な労働環境であっても、文句を言わずに従わねばならない。文句を言えば、〝強制帰国〟の脅しがかけられる。借金を残したまま帰国させられることを彼らは最も恐れる。近年の〝失踪〟の増大(昨年度たげで7千人)はやむにやまれない事情がそうさせるのである。

 

  「技能実習制度」や「特定技能制度」は、直ちに廃止すべきである。資本が労働力を必要とするならば、国境の壁を取り払い、自国労働者と同等の権利と雇用条件で採用すべきである。外国人労働者ということで差別されることは許されない。

 

  しかし、そうなったからと言って問題が解決するわけではない。外国人労働者の問題は日本の労働者の問題であって、例えば低賃金や長時間労働、過労死、男女差別、首切りや失業、そして益々増え続ける非権利状態の非正規労働者の生活苦、これらは日本の労働者にも襲いかかっている問題である。外国人労働者が日本の労働者と同等の権利を得たとしても、彼らはまたこれらの問題に直面するであろう。

 

 労働力を商品として資本に売る以外に生活のすべがない、それ以外生きていけないのは外国人労働者も日本の労働者も同じである。同じ労働者同士、互いに連帯し、連合し、大きなうねりとなって資本に立ち向かっていかねばならない。  

(是)

ルポ べトナム技能実習生の実態(一)

静岡で活動しているKさんから、日本に出稼ぎに来ているベトナム技能実習生の「ルポ」が送られてきました。興味深い内容ですので紹介します。


ルポ べトナム技能実習生の実態(一)

 昨年10月、イギリスで起きたベトナム人の〝コンテナ大量死〟は、日本にも大きな衝撃を与えた。ロンドン郊外で大型トラックのコンテナ内から39人のベトナム人の遺体が発見された。死因は窒息死であった。ヨーロッパでの高賃金を夢見て渡航した若い労働者たちが、悪徳ブローカーによって、輸送手段としてコンテナ内に詰め込まれたものと思われた。日本への技能実習生という名の出稼ぎ労働者の数は日増しに増えている。日本で語学研修を受けているというベトナム人労働者へのルポを試みた。

 

生活苦と100万円の借金

 フンさん(36歳)は、ベトナム中部の出身で、昨12月の末に妻子をベトナムに残して技能実習生として来日した。現在、日本語の研修に励む。

 フンさんの出身地である中部ゲアン省はベトナムの中でも最も経済発展が遅れ、平均収入は北部のハノイや南部ホーチミンの半分以下というから、月収1.5~2万円程であろうか。ベトナムでも北・中・南部の経済格差が広がっており、フンさんは、ベトナムではトビ職の労働者として働いてきたが、長時間のきつい労働の割には低賃金で、また毎日仕事があるわけではなく、家族を養うのが苦しく、一大決意をして来日したという。「ベトナムでの賃金はいくらでしたか?」と尋ねると、たどたどしい日本語で、「1日ハタライテ、40万ドン(約2千円)デス」と答えてくれた。(※1万ドン=約50円)。

 ベトナムでは、1986年の改革・解放路線(ドイモイ(刷新))にともない、貧困の克服や国内の失業対策の名のもとに、海外への労働者派遣を積極的に進めてきた。その結果、2019年度で日本への技能実習生は40万人(全体の24.2%)を超え、中国の41万人(全体の25.2%)に迫る勢いで増加している。その増加率は前年同期の26.7%で、国内の賃金上昇に伴う中国人労働者の相対的減少に対して、ベトナム人は年々増加の傾向にある。ちなみに第3位はフィリピンで17万人であり、外国人労働者全体では165万人をはるかに超えている。

 フンさんは、来日する前の約6か月間、ベトナムの日本語学校で学んだ。そこは全寮制で、19~30歳代の若者たちが学ぶ。授業は朝7時~夜9時過ぎまでの詰め込み教育で、日本式?の礼儀もたたき込まれたらしい。その礼儀とは、正しいお辞儀の仕方や言葉遣い、面接の作法、「ほうれんそう」など、日本で賃金労働者として会社に忠誠を尽くし、会社に従順に従う訓練であったようだ。費用は多額で、日本への渡航費を含めると、ゆうに百万円はかかったとフンさんは言う。「そのお金はどうしたか?」と聞くと、親戚に借りたり、借金をして何とか工面したらしい。


日本は安全で、便利な国 お金ももらえる

フンさんに、「どうして日本を選んだのか?」と聞くと、「日本ハ、アンゼン、キレイ、オ金タカーイ」と答える。出稼ぎ先は、日本が断然トップで過半数を超え、続いて台湾、シンガポールなどが続く。

 日本企業への採用面接は、ベトナム当地で行われ、日本の仲介業者または雇い主の社長が直々に出向いて行われる。採用はかなりの倍率で、彼らには職種を選択する権利はない。仲介業者の話によると、「ベトナム北部や中部の農村に住む若い労働者や妻帯者が好ましい」と言う。理由は当地での賃金が低く、低賃金でも従順に働く労働者が多いこと、また近年問題となっている技能実習生の「失踪」が、妻帯者の場合、比較的少ないという理由によるらしい。日本での実習生の在日期間は3年と決められているが。最低賃金ギリギリや差別待遇などに我慢できず「失踪」する者が増加している。

 フンさんは、何度も面接で落ち、ようやく採用数3人の内のひとりに採用された。採用先は、G県の小さな建設会社で、トビ職の経験者であったことが評価されたようだ。

 内戦やテロ、貧困や劣悪な社会環境からくる治安の悪化に苦しむ人々に比較すれば、なるほど日本は「安全」な国かもしれない。かつてベトナムは、フランスの植民地として苦しめられ、またベトナム戦争により国土や人命が徹底的に破壊された。まだその傷跡が各地に残っていると言われ、社会資本の整備も遅々として進んでいない。例えば、交通面で言えば、ハノイからホーチミン間には旧式の線路は引かれているが、電車は週に1、2便しか走っていない。だから、フンさんは電車に乗ったことがなく、また駅というものを知らない。フンさんの交通手段はどこへ行くにも中古の日本製バイクで、家族3人を前後に乗せて買い物に行くのだという。しかし、考えてみれば、日本も戦後すぐ、1950年代は同じようなものであった。アパートの水道の蛇口から「オ湯ガデル!トテモベンリ」とフンさんは言うが、筆者が幼い頃は水道は冬でも冷たいポンプ式井戸水であった。

 実習生の賃金は、一部月給制もあるが、ほとんどが時間給である。フンさんの場合も時間給で、およそ平均月収11万円程になるという(何と言う低賃金か!)。確かにベトナムでの賃金の5倍ではあるが、その半分を家族に仕送りし、残りを生活費に充てたとしても、5倍をはるかに超える「日本ノ物価タカイネ!」(ちなみに国民食のインスタント・フォーが一袋20円、煙草50円程)という生活の中で、いかに切り詰めたとしても、いくらも残らないであろう。フンさんはまだ働いていないのでその現実がわかっていないようだが、1か月後には厳しい現実に向き合うことになるだろう。
                                   (続く)

                                   静岡・K

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