労働の解放をめざす労働者党ブログ

2017年4月結成された『労働の解放をめざす労働者党』のブログです。

世界情勢

国境炭素税導入が加速 ――対立激化と秩序再編の導火線に

国境炭素税導入が加速

――世界の対立激化と秩序再編の導火線になりかねない

 

 CO2に値段を付ける国境炭素税導入の動きが活発になってきた。これは、CO2排出量に課金する仕組みを作り、CO2削減を急ぐためだとされる。

 

 EU欧州委員会は7月、温室効果ガスの削減策の一つとして国境炭素税を26年に導入する方針を明らかにし、その具体案を公表した。

 

「まず、CO2の排出量が多い鉄鋼、アルミニュウム、セメント、肥料、電力の5分野で、環境規制が不十分な国・地域からの輸入品に課税する。金額は、企業が温室効果ガスの排出枠を取引する際の価格をもとに決める。23年から準備に入り、26年から始める方針だ」(『朝日』21.8.25)。

 

この国境炭素税導入の理由は、単にCO2削減規制が緩い国や遅れている企業の尻を叩くだけではなく、EUの環境規制を避ける目的で、生産拠点を規制の緩い国に移すことを防ぐことにあると報道されている。

 

だが、それだけでは無いだろう。EUは既に自動車のEV化や再生可能エネルギー電力や水素還元製鉄などで世界を一歩も二歩もリードしているのであり、EUはこれを前提に、進捗が遅れている国家の企業製品に国境炭素税を課し、一段と優位な地位を確保し、経済的な大きな利益を狙っているのだ。

 

米国でも、バイデンが昨年の大統領選で公約したに国境炭素税を導入する方向で動き出し、民主党は去る7月に「炭素集約的で貿易上の競争にさらされた業種」に適用すると、具体的な法案を提出した。

 

このEUや米国の動きに対して、日本政府は国内のCO2課金には一応前向きであるが、国境炭素税については、世界の過去の環境税導入の経緯(フロン税や化学物質税など)を研究しはじめている段階であり、「諸外国の検討状況を注視しながら対応を検討する」と様子眺めのようだ。

 

しかし、政府も資本も内心は穏やかではない。日本製鉄の橋本社長はEUの「保護主義」だと反発し、経団連も「慎重な検討を求める」緊急提言を出したことがそれを物語っている。

 

気候温暖化の対策が急務になっているとは言え、EUや米国が環境炭素税を導入するなら、対中国を念頭に置いた経済戦争は、進捗の遅れた日本や非先進国にも飛び火することが必至である。

 

なぜなら、EUへ鉄やアルミなど多くの製品輸出を行っている中国は、対EU〝優位〟が脅かされることになり、日本も自動車や鉄や電力などに課税されるなら、その痛手は計り知れない。さらに、東南アジアや中南米などの非先進国にとっては、新たな危機に直面しかねない。その結果、国境炭素税は、かつて関税戦争が現実の戦争に転化したように、世界の対立激化と秩序再編成に向けた帝国主義的対立の導火線になりかねない。

 

資本主義と帝国主義は、世界共通な課題であり協働して解決しなければならない気候温暖化問題さえ、国家間を競合させ対立させずにおかないのだ。その結果が現実となれば、労働者が一番の犠牲者になるのは明らか。  (W)

政府の棄民策──アフガン、日本の現地スタッフ置き去り

  政府の棄民策、今も昔と変わらず

──アフガン、日本の現地スタッフ置き去り

 

8月31日、米国政府はタリバンとの約束通り、アフガンからの米軍の撤退が完了したと発表した。しかし、タリバンの野蛮な〝報復〟を恐れ、国外に移住を望む多くのアフガン現地スタッフや住民が取り残されたままである。

 

  とりわけ、日本の〝救出〟行動の立ち遅れが目立つ。政府が自衛隊機派遣を決めたのは8月23日、アフガン政権が崩壊してから8日もたってからである。バイデンは、アフガン政府があっという間に崩壊、政府軍も何の抵抗もなくカブール空港周辺はタリバンに占領され、思うような救出が出来なかったと言い訳したが、日本政府はすべて米国任せで自主的になにも主体的に準備していなかったのである。

 

結果、31日に岸防衛相は自衛隊機の撤収を発表し、自衛隊機が運んだのは、日本人1人と、米国から要請を受けたアフガン人14人、僅か15人にとどまり、日本大使館や国際協力機構の現地スタッフとその家族約500人は取り残されることとなった。

 

  一方、日本大使館員12人は全員、政権崩壊後2日、英軍機で脱出しているのである。大使館員が早々と国外に脱出したということは、大使館が危機を察知していた証拠である。にも拘わらず自分たちの安全さえ確保できれば、これまで協力していた現地のスタッフのことなどどうなっても構わないということか。恐るべき無責任というしかない。

 

  こうした政府の態度は、戦前から一向に変わっていない。戦前には、満州に100万戸の移住計画を立て、27万人の満蒙開拓団が送り込まれた。現地に行けば農地も家もあると言われたが、実際には中国人から軍が収奪したものであった。

 

開拓団は日本がでっちあげた「満州国」へ送られ、食糧増産、農業建て直し、さらには満州防衛の役割を担わせた。そして、彼らは敗戦時には「居留民はできる限り定着の方針を執る」とされ、また「満鮮に土着する者は日本国籍を離るるも支障なきものとする」とされたのである。

 

国策として満州に送り込まれた開拓団民は、敗戦によって余計者として国から見放され、「棄民」とされた。国から見放された開拓団員たちがいかに悲惨な状況に貶められたかは、敗戦による逃避行で8万人が命を失い、数多くの幼子たちが中国に置き去りにされたことにも示されている。(以上、寺沢秀文、「満蒙開拓の『真実』」、朝日8・31参照)

 

 アフガンに取り残された500人もの現地スタッフも「棄民」そのものである。彼らは、「民主的」国家を建設するという日本政府の呼びかけで、教育や保健、生活指導などの分野で活動してきた。現地に取り残された彼らは、米国を中心とするアフガン駐留軍への積極的協力者として、報復を受ける可能性は大きい。

 

既に、駐留軍の通訳であった者とその家族は〝裏切者〟として惨殺されたという報道もある。身の危険を感じて出国を望むアフガンのスタッフに対して、政府は責任をもって対応すべきである。

 

 アフガン政府崩壊後の状況を予測して、韓国のように素早く何百人もの国外移住希望者を外国に送ることに成功した国もある。しかし、日本の政府は、大使館員だけは早々と国外に脱出させておきながら、現地スタッフのことはまじめに考えていなかったのだ。さんざん協力させておきながら、後は置き去りとは満州開拓団と同じではないか。今の政府のやり方は、戦時中の政府と何も変わってはいない。

 (T) 

全米に拡大するデモ

全米に拡大するデモ

――人種差別、失業拡大、米国の矛盾を浮き彫りに

 

 

5月23日、米北西部ミネソタ州ミネアポリス市で起こった、白人警察官による黒人殺害事件をきっかけにおこった抗議デモは、1週間ほどの間に全米140以上の都市に広がり、弾圧に向かった警察部隊との対立は先鋭化し、40以上の都市では外出禁止令が出されるなどの事態となっている。

 

 デモに対してトランプは、「テロ」と非難、「法と秩序を」と繰り返し、各州知事に対してデモ鎮圧を行うように呼びかけ、ミネソタ州知事に対しては「もっと強力に対処せよ。さもないと連邦政府が介入し、軍事力を行使して多数を逮捕する」と圧力をかけた。デモ鎮圧に軍隊が投入されることになれば、1992年のロスアンゼルス事件(黒人を殴殺した白人警察官の無罪判決に抗議するデモに軍隊が導入され、死傷者約2400人、逮捕者1・2万人)以来となる。

 

 1968年の公民権法案で人種差別は法的に禁止され、2009年にはアフリカ系市民として初めて大統領になったが、人種差別を公言するトランプが大統領になるなど人種差別はなくならない。今回のデモのきっかけは黒人に対する白人警察官の死に至らしめるような暴力的取り締まりであった。

 

 しかし、広範なデモの背景には、警察官の黒人に対する人種差別的な暴力行為だけはなく、新型コロナウイルス感染の蔓延、そして大量失業・貧困がある。ワシントン・ポストは次のように述べている。

 

 「ウィスコンシン州ミルウォーキー郡では、人口の黒人比率26%に対し、感染して死亡した人々の中で黒人が占める割合は約70%に上っているという。ルイジアナ州も同様で、黒人は人口の32%だが、死者の70%を占めている。

 

ミシガン州では、黒人は人口のわずか14%なのに、感染者の33%、死亡者の40%近くとなっている。同州は郡ごとの人種別データを集計していないが、死者の4分の1はデトロイト市に集中。デトロイトは人口の79%が黒人だ。

 

イリノイ州のシカゴだけでは、……シカゴの死者数の70%近くを黒人が占めている。この街の黒人比率30%より40ポイントも高い数値だ。」「ミシガン州は人口の15%が黒人だが、新型コロナウイルスで死亡したのは約5600人のうち、4割以上を占めている。」

 

 「黒人層が就く仕事の多くは、強制的な密閉状態にあり、よりリスクの高い、不安定な仕事であることが多い。金銭的な柔軟性も低いことが多い。FRBの調査によると、大学卒の黒人世帯で、想定していなかった400ドルの出費に直面した場合に払いきれなくなる世帯は約30%。大卒でなければ、この比率は倍になる。

 

公衆衛生上の危機局面で最も問題になるのも所得だ。クリーブランド地区連邦準備銀行の推計では、白人世帯の所得は黒人の約2倍。この現実は1962年以降、改善していない。理由は込み入っている。住宅供給上の官民による差別的な措置から、黒人層に偏る高い受刑収監率、職場での待遇差に至るまでさまざまだ。

 

こうした問題と別に、直接的な健康リスクがある。センター・フォー・アメリカン・プログレスによると、黒人層がしばしば就くのは小売りやホームヘルパー、介護士など、在宅勤務が難しく、深刻なウイルス感染リスクにさらされる職業だ。

 

コンサルティング会社のマッキンゼーによると、黒人層の人口の65%が集中する全米16州では、病気になったときに医療サービスへアクセスする人の割合が全米平均を大きく下回っている。黒人はすでに、心臓疾患、ぜんそく、がん、肺炎による死亡率が全米平均より高い。」

 

 2015年国勢調査局によれば米白人世帯の年間所得の中央値は6万3000ドル(約636万円)だが、黒人世帯は3万6898ドル(約373万円)と70%もの差があった。同じ新卒生でも黒人というだけで、1980年の時点で10%の開きがあった初任給が、2014年には18%まで拡大した。

 

 一方、「ニューヨーク・タイムス」は、ニューヨーク市の人口5%を占める最富裕層42万人は、新型コロナ感染をさけるために市外に避難し、アッパーイーストサイド、ウエストサイドビレッジ、ソ―ホー、ブルックリンハイツなど富裕層が居住する地域では人口が減少したと報じている。(「赤旗」62

 

 新型ウイルス感染は生物的現象で人を選ばない。しかし、実際には働いたり、居住したりする環境、食生活などによって大きな差が生まれる。金持ち連中は、感染を回避できるような生活環境にいるし、一方、貧しい人々は感染しやすい条件にあり、また感染しても適切な医療を受けることが出来ない。こうした差が、白人と差別され貧困家族が多い黒人の感染率及び死亡率の差に表れている。新型ウイルスによる被害はカネ次第なのである。

 

 しかし、抗議デモには黒人、中南米出身のヒスパニックばかりではなく、白人(特に若い世代)も多く参加している。

 

 新型コロナウイルスが蔓延して、企業の閉鎖、人員削減などによって失業率は1940年以降で過去最高の14・7%、3月半ば以降の失業保険の申請者数は9週間で3800万件を突破した。これは5人に1人以上が職を離れたことになる。

 

 白人だからと言って豊かだとは言えない。失業は黒人やヒスパニックばかりではなく、白人労働者を襲っている。米国の繁栄の時代はとっくに終わり、産業は空洞化し金融業が膨張するなど、米国経済は頽廃の度を強めている。こうした中、大株主など富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなる貧富の格差は拡大している。2013年の調査によると、全世帯のうち最も裕福な上位3%の世帯が国家の富の54・4%を握っている。一方、収入において下から90%の世帯は、富の24・7%を占めているにすぎない。

 

とりわけ、ミレニアム世代と言われる、2000年代に成年、社会人となる若者の生活は厳ししい。彼らは巨額の学生ローンを抱え、専門的で報酬が高い仕事に必要とされるスキルを持たない教養学部系大卒者の多くは、自分の能力を十分生かせない仕事をしているか、失業中である。こうした若者は単発や短期の仕事で働くか、スターバックスでバリスタとして働くか、大学院に進学してさらに借金を重ねるかの選択を強いられている。

 

 新型コロナウイルス感染の蔓延は、生産・流通の分断、縮小によって多くの労働大衆を失業に陥れた。しかし、新型コロナウイルス感染によってはじめて生活困窮に陥ったのではなく、若者や働く者の貧困状態を浮き彫りにした。ワシントンのデモでは「金持ちを追い出せ」とか「家賃を減免せよ」などの経済的な困窮を訴えるプラカードや落書きが目立ったというが、若い世代にとって貧困は、自らのものでもある。白人警官による黒人殺害を契機に広がった広範なデモは、黒人差別に対する抗議であるばかりでなく、将来に展望を持つことのできない資本の支配する社会への不信、不満の現れである。 (T)


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