労働の解放をめざす労働者党ブログ

2017年4月結成された『労働の解放をめざす労働者党』のブログです。

トランプ政権

米トランプ政権 国際刑事裁判所を制裁

沖縄で闘う仲間からの投稿です。

米トランプ政権 国際刑事裁判所を制裁

――アメリカの「自由と民主主義」とは何なのか

 

アメリカのトランプ政権は、アメリカ軍の兵士がアフガニスタンで拷問を行った疑いがあるとして、国際刑事裁判所(ICC)が捜査をしていることへの対抗処置として、9月3日、主任検察官ら二人に制裁を科すと発表した。

国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪等を裁く常設の国際裁判所である。

ICCは、東西冷戦終結後の民族紛争等が頻発する中で準備されてきたが、2002年7月、ローマ規程が発効し、オランダのハーグに設置された。

世界中で戦争を繰り返してきたアメリカは、当初からアメリカ兵の訴追の可能性が言われる中、終始批判的で、当時の民主党のクリントン大統領はしぶしぶ署名をしたのであるが、民主党内にも反対派がおり、批准は見込めず議会には上げられなかった。そして、アフガニスタン侵攻、イラク戦争を起こした次の共和党のブッシュ大統領によって署名は撤回された、という経緯がある。

6月にトランプが大統領令(行政命令)に署名した後、ポンペイオ国務長官は、国防長官と司法長官との共同会見で、アメリカ軍や連合軍兵士を捜査しようとするICCの動きに、直接協力及び物的支援した外国人に経済制裁を科すことを表明していた。

これには経済制裁のほか、責任者らとその家族のアメリカへの入国禁止処置も含まれるというものだった。曰く、彼らはアメリカの自由を守っている者を裁いているときに、アメリカに来てその自由を楽しむことは許せない、というのである。

また、エスパー国防長官は、アメリカは国際刑事裁判所の設置に関するローマ規定への署名を撤回している。(だから関係ない?)

アメリカは国に尽くした国民が正当性のない捜査の対象になることを許さない、などと述べている。

 他方、バー司法長官は、「ロシアのような外国勢力が・・・
ICCを操り、自国の利益を追求している」と、証拠を示さずに主張して、国外に矛先を向けることで国内の引き締めを図るという常套手段を使い、アメリカのICC批判を増大させた。


だが、これらは単に、アメリカ兵は裁かせない、アメリカの国益を損なうものは容認しない、と言っているに過ぎない。

アメリカは世界中に8百余もの軍事基地を要する帝国主義国家である。そんな国家が、超大国としての力を振りかざして、アメリカ軍は特別扱いしろ!と怒鳴っているのである。利己主義の極みであり、恥ずかしい限りである!

 アメリカはこれまで「自由と民主主義」の守護者であるかに振舞ってきたが、しかし、アメリカの言う「自由と民主主義」とは、いわば人類にとっての普遍的価値といった御大層なものではなく、アメリカにとっての「自由」であり、アメリカという国家の利益に沿う限りのものであり、それはケチ臭いアメリカン ナショナリズムの代名詞に他ならない、ということが再び三たび明らかになっただけである。


これは、アメリカ ファーストを掲げる、粗野なトランプ政権に特徴的な事では決してない、以前からそうだったのをトランプ政権が明け透けに表現したに過ぎない。

 そもそもアメリカは、その国家の誕生時から戦争犯罪とは無縁ではなかった。奴隷制度以来現在に至るまで黒人差別を温存している事を別にしても、先住民との戦争では虐殺を繰り返し、差別と貧困とともに、彼らを荒野の保留地に押し込めてきたことはアメリカ史の中に深く刻まれている。そして、朝鮮戦争時の
老斤里事件、ベトナム戦争時のソンミ村虐殺事件、あるいは焦土化を意図した無差別爆撃、あるいはイラク戦争におけるアブグレイブ刑務所の捕虜虐待等々、多くの戦争犯罪を繰り返してきた国家なのである。当然、これらの作戦に関わった米軍人は告発され裁かれるべきなのだ。


それができるには、巨大な軍需産業と軍が融合した強大な軍産複合体との闘いが避けられない。それにはアメリカの労働者階級が主体となるも、全世界の労働者の団結した力の高揚が不可欠となろう。

(沖縄 S

全米に拡大するデモ

全米に拡大するデモ

――人種差別、失業拡大、米国の矛盾を浮き彫りに

 

 

5月23日、米北西部ミネソタ州ミネアポリス市で起こった、白人警察官による黒人殺害事件をきっかけにおこった抗議デモは、1週間ほどの間に全米140以上の都市に広がり、弾圧に向かった警察部隊との対立は先鋭化し、40以上の都市では外出禁止令が出されるなどの事態となっている。

 

 デモに対してトランプは、「テロ」と非難、「法と秩序を」と繰り返し、各州知事に対してデモ鎮圧を行うように呼びかけ、ミネソタ州知事に対しては「もっと強力に対処せよ。さもないと連邦政府が介入し、軍事力を行使して多数を逮捕する」と圧力をかけた。デモ鎮圧に軍隊が投入されることになれば、1992年のロスアンゼルス事件(黒人を殴殺した白人警察官の無罪判決に抗議するデモに軍隊が導入され、死傷者約2400人、逮捕者1・2万人)以来となる。

 

 1968年の公民権法案で人種差別は法的に禁止され、2009年にはアフリカ系市民として初めて大統領になったが、人種差別を公言するトランプが大統領になるなど人種差別はなくならない。今回のデモのきっかけは黒人に対する白人警察官の死に至らしめるような暴力的取り締まりであった。

 

 しかし、広範なデモの背景には、警察官の黒人に対する人種差別的な暴力行為だけはなく、新型コロナウイルス感染の蔓延、そして大量失業・貧困がある。ワシントン・ポストは次のように述べている。

 

 「ウィスコンシン州ミルウォーキー郡では、人口の黒人比率26%に対し、感染して死亡した人々の中で黒人が占める割合は約70%に上っているという。ルイジアナ州も同様で、黒人は人口の32%だが、死者の70%を占めている。

 

ミシガン州では、黒人は人口のわずか14%なのに、感染者の33%、死亡者の40%近くとなっている。同州は郡ごとの人種別データを集計していないが、死者の4分の1はデトロイト市に集中。デトロイトは人口の79%が黒人だ。

 

イリノイ州のシカゴだけでは、……シカゴの死者数の70%近くを黒人が占めている。この街の黒人比率30%より40ポイントも高い数値だ。」「ミシガン州は人口の15%が黒人だが、新型コロナウイルスで死亡したのは約5600人のうち、4割以上を占めている。」

 

 「黒人層が就く仕事の多くは、強制的な密閉状態にあり、よりリスクの高い、不安定な仕事であることが多い。金銭的な柔軟性も低いことが多い。FRBの調査によると、大学卒の黒人世帯で、想定していなかった400ドルの出費に直面した場合に払いきれなくなる世帯は約30%。大卒でなければ、この比率は倍になる。

 

公衆衛生上の危機局面で最も問題になるのも所得だ。クリーブランド地区連邦準備銀行の推計では、白人世帯の所得は黒人の約2倍。この現実は1962年以降、改善していない。理由は込み入っている。住宅供給上の官民による差別的な措置から、黒人層に偏る高い受刑収監率、職場での待遇差に至るまでさまざまだ。

 

こうした問題と別に、直接的な健康リスクがある。センター・フォー・アメリカン・プログレスによると、黒人層がしばしば就くのは小売りやホームヘルパー、介護士など、在宅勤務が難しく、深刻なウイルス感染リスクにさらされる職業だ。

 

コンサルティング会社のマッキンゼーによると、黒人層の人口の65%が集中する全米16州では、病気になったときに医療サービスへアクセスする人の割合が全米平均を大きく下回っている。黒人はすでに、心臓疾患、ぜんそく、がん、肺炎による死亡率が全米平均より高い。」

 

 2015年国勢調査局によれば米白人世帯の年間所得の中央値は6万3000ドル(約636万円)だが、黒人世帯は3万6898ドル(約373万円)と70%もの差があった。同じ新卒生でも黒人というだけで、1980年の時点で10%の開きがあった初任給が、2014年には18%まで拡大した。

 

 一方、「ニューヨーク・タイムス」は、ニューヨーク市の人口5%を占める最富裕層42万人は、新型コロナ感染をさけるために市外に避難し、アッパーイーストサイド、ウエストサイドビレッジ、ソ―ホー、ブルックリンハイツなど富裕層が居住する地域では人口が減少したと報じている。(「赤旗」62

 

 新型ウイルス感染は生物的現象で人を選ばない。しかし、実際には働いたり、居住したりする環境、食生活などによって大きな差が生まれる。金持ち連中は、感染を回避できるような生活環境にいるし、一方、貧しい人々は感染しやすい条件にあり、また感染しても適切な医療を受けることが出来ない。こうした差が、白人と差別され貧困家族が多い黒人の感染率及び死亡率の差に表れている。新型ウイルスによる被害はカネ次第なのである。

 

 しかし、抗議デモには黒人、中南米出身のヒスパニックばかりではなく、白人(特に若い世代)も多く参加している。

 

 新型コロナウイルスが蔓延して、企業の閉鎖、人員削減などによって失業率は1940年以降で過去最高の14・7%、3月半ば以降の失業保険の申請者数は9週間で3800万件を突破した。これは5人に1人以上が職を離れたことになる。

 

 白人だからと言って豊かだとは言えない。失業は黒人やヒスパニックばかりではなく、白人労働者を襲っている。米国の繁栄の時代はとっくに終わり、産業は空洞化し金融業が膨張するなど、米国経済は頽廃の度を強めている。こうした中、大株主など富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなる貧富の格差は拡大している。2013年の調査によると、全世帯のうち最も裕福な上位3%の世帯が国家の富の54・4%を握っている。一方、収入において下から90%の世帯は、富の24・7%を占めているにすぎない。

 

とりわけ、ミレニアム世代と言われる、2000年代に成年、社会人となる若者の生活は厳ししい。彼らは巨額の学生ローンを抱え、専門的で報酬が高い仕事に必要とされるスキルを持たない教養学部系大卒者の多くは、自分の能力を十分生かせない仕事をしているか、失業中である。こうした若者は単発や短期の仕事で働くか、スターバックスでバリスタとして働くか、大学院に進学してさらに借金を重ねるかの選択を強いられている。

 

 新型コロナウイルス感染の蔓延は、生産・流通の分断、縮小によって多くの労働大衆を失業に陥れた。しかし、新型コロナウイルス感染によってはじめて生活困窮に陥ったのではなく、若者や働く者の貧困状態を浮き彫りにした。ワシントンのデモでは「金持ちを追い出せ」とか「家賃を減免せよ」などの経済的な困窮を訴えるプラカードや落書きが目立ったというが、若い世代にとって貧困は、自らのものでもある。白人警官による黒人殺害を契機に広がった広範なデモは、黒人差別に対する抗議であるばかりでなく、将来に展望を持つことのできない資本の支配する社会への不信、不満の現れである。 (T)


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