横浜でマルクス主義の学習会を行っている『横浜労働者くらぶ』発行の『労働者くらぶ』第68号の記事を紹介します。
『資本論』は難しいか?!
Aさんが仕事関係の二人を誘ってくれたおかげで、今月から『資本論』の読書会を始めることになりました。お二人は仕事の都合で、定期的に日にちを決めるのが難しいので、月2回の原則を守りつつその都度、開催日を決めていくことになりました。
Yさんは『資本論』は初めてといい、Mさんは途中で挫折したと話していました。お二人とも異口同音に、『資本論』の難解さを話していましたので、私の方からは、決してそんなことはない、コツコツしっかり学んでいけば、必ず理解できるから、初めから難解と思い込まないでほしい、と何とか不安を払拭しようとしました。そこでここでは、なぜ『資本論』
が”難解”と言われるのか、その理由を考えてみたいと思います。
★資本主義社会は人類史の一通過点!
『資本論』は書名ばかり知られていて、その実、読まれることのない書物です。確かに『資本論』が難解と言われるのには根拠があります。最初の第1章から、商品とか貨幣とかがさんざん出てきます。
商品や貨幣という言葉、は私たちが日常、何の疑問もなく普通に使っている言葉です。ところが、マルクスはこの商品や貨幣をあれやこれや徹底的に分析するのです。“資本”論なのに、資本については全く扱われないのです。ここで読者は最初につまずいてしまうのです。
何のために商品や貨幣をあれこれ問題にするのか?それには理由があります。それは、商品や貨幣とは何なのか、その本質は何なのか、ということが分からなければ、資本というものが分からないからです。
資本とは、商品や貨幣が発展したものなのです。商品や貨幣といった資本論に出てくる言葉の多くが、自然科学のような専門用語でなく日常の言語であることが理解を困難にし、誤解を招く原因の一つになっています。
現代の経済学(ブルジョア経済学)は、商品や貨幣、資本とは何であるか、などということは頭から問題にしません。それらが存在することを前提にして生産や分配、消費、景気などを論じており、しかもそうした貨幣や資本の存在(当然、この資本主義社会も労働者と資本家という階級の存在も)が永遠に続くものと考えているのです。
確かに現代社会は、商品や貨幣、資本がなくては、社会そのものが回りません。しかし今のような発達した資本主義社会になったのは、ヨーロッパに始まった産業革命からといってもよいのです。
それ以前の社会は、これほど商品や貨幣が溢れた社会ではありませんでした。何千年、何万年という人類の歴史から見れば、資本主義社会はたかだか数百年にすぎず、このような社会が永遠のものだと考えるのは馬鹿げています。
要するにマルクスは、私たちが日常的に当たり前と思っている貨幣や資本の存在を根本から疑い、分析し、この資本主義社会が、人類の長い歴史の中で、一時的な時代であり、働く者や労働者が主体となる社会になるまでの過渡期に過ぎないことを明らかにしたのです。
★現象から本質へ!
商品、貨幣、資本が、目の前に存在している、これは確かなことです。これらを基礎に資本主義社会は動いているのですから、この現象を否定することはできません。
しかし、商品、貨幣、資本も昔から存在したわけではありません。それはある時代に生まれ、発展してきたものです。それを理論的、歴史的に分析した人がマルクスです。そのことが分からなければ、人は商品や貨幣、資本の社会が真理であり、資本主義社会がいつまでも続くと考えるでしょう。
17 世紀、ガリレオ·ガリレイは、太陽が地球を回っているという天動説を否定し、地動説を主張しました。現象としては、太陽が地球を回っているように見える、しかし真実は地球が太陽の周りを回っているのです、これが現象と本質との関係です。
マルクスは、現象はイコール真理ではない、もし真理が真理として現れているなら学問はいらない、と喝破しました。ブルジョア経済学は、商品、貨幣、資本という現象そのものを何ら問題とせず、表面に現れた数字や統計をいじくり回して、資本主義の経済現象を解明した気になっています。
マルクスは資本論の第1章で、商品交換という現象を見て、なぜ見た目がまったく違う商品が対等のものとして交換されるのかを分析し、そこに等しい商品価値(その実体は抽象的労働)であるということを発見しました。
その際、経済学には自然科学と違って顕微鏡も試薬もないので、思考の“抽象力”が両者の代わりをするのだと説明しています。どの学問にも特有の専門用語や理論があり、その難解さは資本論と同じです。
どの学問も基礎からの地道な積み重ねがあってこそ理解されるものです。ただ資本論ではキーワードとなる商品、貨幣、資本と言った言葉が、日常使われている言葉だけに余計混乱を招くのです。
★「資本論」の階級性
さらに『資本論』の階級性という問題があります。もちろん真理は誰にとっても真理です。どの階級に属していようと地球は太陽の周りを回っているという真理は動かすことはできません。
しかし現代は資本主義社会です。そこには様々な利害関係が渦を巻いており、この利害関係が真理の認識を妨げるのです。この利害関係(その根本は階級関係)が、真理を真理として認めることを妨げるのです。
その中心は、資本家による労働者の搾取という関係です。 『資本論』はまさにこの搾取関係、階級関係の構造を、理論的に歴史的に徹底的に何人にも完膚なきまでに明らかにしたものです。
しかし、この真実ほど資本家にとって不都合なことはありません。何しろ、いかに資本家が労働者から剰余価値(利潤)を搾りとり、食うや食わずの賃金を与え、長時間の、耐え難い労働を強いているか、そして資本主義社会は、
競争によって資本家にそれを強制しているかを理路整然と明らかにしているのです。
この資本主義社会の根本的構造が明らかにされることを資本家階級は嫌い、『資本論』は間違っているとか、『資本論』 はもう古い、などと言って『資本論』を非難したり無視したりするのです。
しかし労働者階級は違います。労働者階級は『資本論』が明らかにしてくれた真理を認めることにどんな不都合もありません。むしろ真理が明らかになることを望み、『資本論』を自分たちの未来の社会を切り開く闘いの武器にするのです。
★“革命的”な『資本論』を学習しよう!
『資本論』は、もう古くなった、そんなことは全くありません。一見、複雑になった現代の資本主義も、19、20世紀に生まれた資本主義にその本質は変わりなく、その根本原理は同じものです。
労働者に対する過酷な搾取、非人道的な扱いや支配階級の堕落した政治も、当時より一層ひどくなっただけです。現代はこれらを一掃する労働者階級の闘いをますます必要としているのです。
そのためにマルクスの、革命的な『資本論』(斎藤幸平や白井聡、佐藤優のような革命性を意図的に無視した『資本論』解釈でなく)を学ぶ必要がますます高まっているのです。
そして『資本論』は、現代の分化した個別科学とは違って、単に経済だけでなく法律や政治、科学や芸術まで論じた著作であり、それは人間の生き方までを教える真にラディカル(根本的な)著作です。これこそ個別の現象を全体の中で、相互関連の中でとらえる弁証法の真髄ではないでしょうか。
『資本論』を真剣に読むことによって、マルクスの資本主義社会の分析に目が洗われる思いがすることでしょう。これこそ『資本論』がその誕生以来、百数十年にわたって人々を、なかんずく労働者階級を励まし続け、労働者のバイブルと言われてきた理由です。
皆さんが『資本論』から革命的精神を学び取り、資本の支配を一掃する労働者の闘いに参加することを切に願います。最後に、以前にも引用しましたが、20 世紀のドイツの劇作家ブレヒトの詩を掲げたいと思います。(K)
『学習を讃える』
~ベルトルト·ブレヒト~
学ぶのだ、誰でも知るべきものを。
時代を今、担いとろうとする者が学ばずにいていいものか。
学ぶのだ、ABC
を。それだけでは足りないがまず学ぶのだ!
今さら、などと言わないで
はじめよう! きみは全てを知らねばならぬ、
きみは前衛とならねばならぬ。
学べ、ドヤにいるひとよ
学べ、監獄にいるひとよ
学べ、台所の女よ
学べ、六十の老婆よ
君は前衛とならねばならぬ。
学校へ行け、家を持たぬ者よ
知識を手に入れろ、凍える者よ
飢える者よ、本を手に取れ、本も武器のひとつ、
君は前衛とならねばならぬ。 (野村 修訳、後半省略)
「横浜労働者くらぶ学習会案内 ― 10 月の予定
◆ 『資本論』第1巻学習会 (第4水曜日開催)
日 時:10 月 28 日(水)18 時 30 分~20 時 30 分
場 所:県民センター703 号室
学習範囲:第17 章「労働力の価値または価格の労働賃金への転化」から第20 章「労賃の国民的差異」まで
◆ 『資本論』第3巻学習会 (第2水曜日開催)
日 時:10 月 14 日(水)18 時 30 分~20 時 30 分
場 所:県民センター703 号室
学習範囲:第41 章「差額地代II第1の場合」から第44 章「最劣等耕作地でも生まれる差額地代」まで
◆マルクス主義文献学習会 (第3水曜日開催)
― マルクス『普及版マルクス·レキシコン3』久留間鮫造編
日 時:10 月 21 日(水)18 時 30 分~20 時 30 分
場 所:県民センター703 号室
学習範囲:3 唯物史観 (テキストは用意します)
『労働者くらぶ』通算第68号2026年9月23 日発行
発行 横浜労働者くらぶ
Mail:kikuchisatoshi@jcom.home.ne.jp
連絡先 TEL:080-4406-1941(菊池)




