労働の解放をめざす労働者党ブログ

2017年4月結成された『労働の解放をめざす労働者党』のブログです。

医療・介護職場

2025春闘継続中 ――医療・介護職場からの報告 1/3

2025春闘継続中


――医療・介護職場の労働組合からの報告 1/3

 

低賃金にもほどがある

時給6.9円(月1200円)アップでは生活維持できない!

 

 2025春闘において労組は、愛媛県N市の医療生活協同組合理事側に対し①賃上げ月給者月20,500円以上(定昇分、生活維持向上分、格差是正分等を基に労組春闘アンケー等勘案し、全国一般労組と同基準)、時給者1時間80円以上 ②夏一時金2カ月分以上、嘱託者(60歳定年後一年契約で、全職員500名の4割を占める200名)にも労働時間に比例し職員と同率とせよ、寸志で済ますな! ③勤務評定廃止 ④60歳定年制を65歳まで引き上げる要求等 を申し入れ5回の団体交渉を重ねてきた。

 

 N市の医療生協は、病棟併設診療所1,外来診療所2,デイケア、グループホーム、居宅介護支援センター、サービス付き高齢者向き住宅、訪問看護ステーション、定期巡回訪問介護等合計30事業所を運営し、全職員500名、うち200名は60歳以上で一年契約の嘱託者、また500名中週32時間労働以下パート者は270名だ。

 

 賃上げ要求①への回答は1200円だった。基本給に対するアップ率はわずか0.6%の超低額。月1200円は米価に象徴される物価高騰に全く対抗できない。もともと賃金水準が高いわけでもなく、東京や大阪など大都市に比べ住宅費が安い以外は、物価はたいして変わらない。基本給は②の一時金回答から計算できる。

 

 例えば60歳以下の正職員127名の2025年夏一時金は0.8カ月で平均157,709円の回答であった。157,709円を0.8で割れば197,136円となり、平均基本給は約197,100円と計算できる。

 

 厚生労働省昨年6月発表の高卒者初任給は199,800円だ。生協の専門職達は高校卒業後に専門学校等や実地研修後に資格を取ったりしたうえ、何年も経験を積んできており、かつ医療・介護の専門職(設置基準で事業所形態に応じ、看護師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士等の定員数が定まっている)の存在なしでは事業所運営が許可されない。

 

 生協職員の平均年齢は56歳であり、2000年4月に始まった介護保険事業や、それ以前の医療保険に組み込まれていた老人デイケア担当以来のベテラン職員は多い。介護職員改善手当が増額されてきたとはいえ、彼女・彼達の基本給が高卒者初任給と変わらないのは極めて不当だ。

 

 このような低賃金で離職者が全体(500人)で昨年48人いたのも頷ける。約1割近くが辞めていくのである。なお今年の年末一時金も0.8カ月なら2025年度の平均的職員の年収はわずか16,320円増加に止まる【1200×(12+0.8+0.8)】。これで物価高騰に対応できるわけがない。数回の団体交渉を経て開催の、組員3人に1人の割で構成される職場委員会では、「上積なしでは妥結しない」との条件で、妥結は執行委員を中心とする交渉団一任となった。

 

 しかしながら具体的な前進回答がなく、夏一時金のみ妥結し、賃上げや嘱託者差別(60歳以下には基本給の0.8カ月分に対し、嘱託者には週40時間労働者に寸志4万円)、新賃金表等は継続協議となった。回答は容認しがたい超低額であったが、昨年度8千万円を超える赤字決算を理由とする理事側の強硬姿勢と「夏期一時金」の性格から、早期支給を考慮し総額39万円の上積で収拾せざるを得なかった。なお、賃上げは妥結しておらず、妥結後の新基本給で算出した一時金額との差額や上積分は、年末一時金時に支給されることになる。

(2/3に続く)

2025春闘継続中 ――医療・介護職場からの報告 2/3

2025春闘継続中

――医療・介護職場の労働組合からの報告 2/3――

 

最低賃金額に張り付く仲間急増中

 

 理事側は借金を重ねて設備投資をしたものの、医療・介護報酬制度の改変や利用者減で見込んだ収入が得られず、事業規模は拡大したが、それを支えてきた職員には「我慢」を押し付けてきた。労組の力不足もあった。賃上げ額が時給7円~10円アップで17年続き、ここ数年の最低賃金急増額(愛媛県では2021年に821円で前年+28円、22年853円で同+32円、23年897円で同+44円、24年956円で同+59円、25年1033円で同+77円)によって追いつかれた。

 

 理事側は最賃に抵触した職員には法違反を避けるべく最賃額との差額を支給、基本給が最賃を1円でも上回る職員には相変わらず時給7円昇給で済ますという賃金政策をとってきた。労組側にはそれを跳ね返す力がなかったということである。

 

 春闘回答書では賃上げ原資220万円(平均時給換算7円)とあった。団体交渉で昨年38名の職員が最低賃金を下回っており賃上げしたと理事側は答えたが、この38名は昨年10月に時給が960円に引き上げられており、今年2025年の最賃改訂で前年並み60円アップだと仮定すれば(実際は77円だった)一人月10320円(60円×172時間)で半年分(10月から3月)61920円の昇給原資が必要で、38名なら235万円(61920×38)必要となる。賃上げ費用は回答書の220万円で賄えるのか?と理事側に質問したところ、賃上げ原資220万円以外に最賃対策で640万円予算計上しているとの返答であった。労組には賃上げ原資220万円(時給7円)が精いっぱいと文書回答しながら、団交で質問して初めて最賃対策にはその3倍を予定していたことが判明した。

 

 個別労使交渉での力関係とは別の最低賃金審議会(中小資本家・労働組合・公益の三者で

構成、本質は秩序維持装置)の強制力には従うということであり、理事側の対応は少数派労組の非力を感じた。

 

 38名で235万円なら最賃対策の640万円は2.7倍分であり、対象人数は100名(38名×2.7)ということか。人数は月172時間労働の職員と仮定しての計算であり、全職員の6割を占めるパート者を考慮すれば、理事側は最賃制度で100名以上の賃金改定を予想していたことになる。それは現在100名以上の職員が時給1033円以下で労働していることを示している。

(3/3に続く)

2025春闘継続中 ――医療・介護職場からの報告 3/3

2025春闘継続中


 
――医療・介護職場の労働組合からの報告 3/3

 

賃金表の破綻(法違反状態の賃金表)

 

 2008年6月作成(現行)の職種別賃金表では、一番対象人数の多い介護職賃金表は、1号俸132,500円~142,500円で、時給でいえば義務的月労働時間172で割ると、770円~828円。2008年の最低賃金は631円で生協介護職は139円多く、介護職初任給は最低賃金を約24,000円上回っていた。

 

 当時300人を超す職員がいる職場で「最低賃金」など労働条件としては無関係であると私は迂闊にも思っていた。ところが先の1号俸132,500円~142,500円、2号俸133,500円~149,500円、3号俸134,500円~156,500円・・・と続き、幅のある賃金表額は最低評価なら1000円ずつしか昇給せず、25号156,500円~210,500円となっている。 

 

 初任給最低額132,500円(時給770円)は11年後の2019年最賃額790円を下回り、労組は経営側に指摘した。それに対して「介護職員処遇改善手当分」を基本給に足すことで問題なし」の態度をとったのだった(介護職員から問い合わせがあったらそう答えよとの介護職場長あての文書の存在あり)。 

 

 事実、最近ネット上では社労士事務所等が介護事業者に「厚労省は介護職員処遇改善手当の本来の趣旨は基本給の底上げに使うべきで好ましくない と言っているが禁止だとはいっていない」として「算入」を勧めている。「最低賃金抵触部分への算入は禁止されていない」に飛びつく介護業者は存在するだろう。  

 

 生協は、処遇改善手当の最賃対策への「算入」を現在止めているが、昇給に処遇改善手当の9割を流用、それも累計で年1000円昇給が10年あったら10年累計で10×1000=10000円、その9割である9000円を毎月の処遇改善手当から基本給増額に流用している。春闘では以前から「流用を止めて全額を介護職員処遇改善手当として支給せよ」との労組要求を理事側は拒否している。

 

 愛媛県の最賃時給1033円(昨年は956円)が報道された。最賃による昇給職員(昨年最賃クリアのため時給で960円(生協は最賃そのままでは求人募集に差し障ると考えて956に4円足した)に引き上げとなった職員38名は今年時給73円(最賃クリアのため)アップとなる(1033円-960円)。月12556円(73×月義務的労働時間172時間)昇給することになる。

 

ここ10年毎年月1200円の賃上げが続いており、新人は10年先輩の賃金に一年で追いつくことになる。自公政権が最賃1500円を目指すと言っている、また7月の参院選では多くの政党が最賃アップをかかげた。物価上昇が続く中で、最賃引き上げの傾向は今後も続くだろう。最賃対策に昇給原資を割いて、ベテランには時給7円アップで対応する低昇給路線が続くとすれば、来年には新人が20年先輩の賃金に追いつく。結果として職員の多くが「最低賃金」に限りなく張り付く職場となる。こんな職場はごめんだ。

 

 2025春闘アンケートの自由記入欄には「長年働いてきた職員の給与は大きな見直しがなされず、新人との差がなくなってきている、今まで働いてきたのがなんだったのか」と書かれていた。

 

 医療・介護は資本の政府の福祉政策として、保険制度で運営されているが、日本資本主義の衰退とともにその破綻が顕著になっている。保険料値上げと負担率の引き上げはセットで実行されてきた。「負担」を懸念して「医療受診」「介護利用」の「手控え」が新型コロナ流行期から増えている。

 

利用者「手控え」は医療生協のように、低賃金による人件費圧縮で設備投資を繰り返してきた経営を赤字転落させた。介護報酬の増額が経営危機の決め手になるか。介護報酬の大幅増は利用料金の増額であり、利用者の負担増となる。それでは「利用手控え」増となり経営が上向くか疑問である。また、介護報酬の増額をするより軍事費増強に費やす現実があり、その傾向は自公政権のもとで拍車がかかっている。

 

 そもそも介護は生産部門(新たな富を生産)ではなく消費部門である。資本家にとって本質的には介護は空費(むだづかい)である。ただ、人口的には多数派の労働者階級を慰撫する政策として採用されている。人類の特性として「老いていく」仲間への介護は、利潤目的でなく自然な相互扶助として行なわれる、原始共同体時代のごとく。そんな時代を見据えて、

働き甲斐のある将来に希望のもてる労働条件を提供せよと!と訴えよう!そして、労働条件改善のための闘いと結び付けて、賃金制度を克服する労働者の階級的な団結をうち固めることを意識的に追求して、労働の解放を勝ち取ろう。 (愛媛 FY)
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