労働者は国籍や肌の色、正規・非正規など一切の差別に反対し、共に仲間として搾取労働を廃絶する闘いに立ち上がろう!

 

難民を拒む一方、増大する使い捨て外国人労働者

 

入管難民法改正案」は断念したが

 

名古屋入管に“不法滞在者”として収容されていたスリランカ人のウィシュマさんが、病気にも関わらず満足な治療を受けることなく死亡した事件は、連日のように全国放送やローカルニュースでも取り上げられ、来日した姉妹が法務大臣に対して入管施設でのビデオの公開を求め抗議した。今国会に提出されていた「入管難民法改正案」は国連人権委員会からも内容について「国際基準」に反していると批判を受け、反対運動が盛り上がる中で起きたウィシュマさんの死亡事件で、菅政権は今国会での法案成立を断念した。

 

 日本の難民認定は19年の申請者のわずか0・4 %と欧米に比べて圧倒的に低い。自国での政治的迫害や弾圧、内戦から逃れてきた人々のうち少なからぬ人々が日本に難民として入国し難民認定を申請した人数は、19年に1万375人いたが、難民として認定され日本に滞在することが認められた数は44人でしかない。

 

日本政府は、難民を認めると犯罪者やトロリストが紛れ込んでくる、難民は受け入れている、と言うが、難民として認定する条件が余りにも厳しく難民を受け入れないための方便でしかない。

 

つい最近、「在留期間が満了となった後、在留を希望するミャンマー人に対し(この中には日本国内でミャンマーの民主派を支援する人もいる)、法相が個別に活動を指定する在留資格の『特定活動』を付与し、6か月間の在留と在留期間中の就労を認める。ミャンマーの国内情勢が改善しない場合は在留資格の更新を可能とする」という方針を発表したが、軍のクーデターという非常事態の国に送還することはいくらなんでも出来ないからであるが、「国内情勢が改善すれば」その限りではないと謳われている。

 

 日本政府が難民の認定をかたくなに拒み、難民申請3回目以降で強制送還を可能とする入管難民法改正案を成立させようとしたのは、難民に対する狭い後れた民族主義的な反発(日本は単一民族だ、財政的負担が増す、など)とともに、国家権力が支配秩序を維持する上で多くの難民を受け入れることが治安維持にとってマイナスと考えるからである。

 

 日本政府が国際的な人権問題=中東の内戦による難民や東欧、ロシア国内の人権抑圧、そして中国のウイグル人の〝民族浄化〟に対して真面目に向き合おうとしないのは、戦前戦中の韓国に対する従軍慰安婦(若い女性の性奴隷)や朝鮮人労働者の強制徴用問題、中国に対する侵略と植民地支配に対して、日本の支配階級は真摯な反省と謝罪をすることなく言いつくろい、数百万の日本国民と数千万人のアジアの人々に犠牲を強いた侵略戦争を「正義の戦争」「祖国防衛戦争」と開き直る「歴史修正主義」の立場が自民党政権(安倍政権はその筆頭)の主流になってきたからである。

 

 難民を受け入れない国家主義的、民族主義的政治が事実上破綻しているのは、19年に成立した改正出入国管理法によって在留資格5年の特定技能職35万人受け入れを決定し、人手不足に悩む企業の要求に応じたことに見られる。これは移民労働者の受け入れ拡大にほかならない。

労働者数 

既に日本には技能実習生や日系外国人などの外国人労働者が172万人も就労している。彼らの中にはコロナ禍の中で、失業し金銭的に追い詰められ犯罪に手を染める人や、帰りたくても帰れない技能実習生がおり、愛知県内の寺で共同生活している実態が報道されていた。

自民党政権は、企業の求めに応じて派遣労働を86年に専門的職業に限って認可したが、その後派遣労働の業種職種を広げ今ではほとんど全ての業種職種で派遣労働者を企業が雇い入れることが可能となっている。

 

派遣労働は企業にとって、自動車生産ラインにおけるジャストインタイム(必要な時に必要な量を供給補充することによって、生産効率を高めて無駄を排除し利潤の増大を目的とする方式)と全く同じである、必要な労働者を必要な時に必要な人数、雇い入れ(できるだけ低賃金で)、必要なくなれば解雇できるという企業にとって天国のような制度が日本を覆い尽くしている。

 

企業にとっての天国は労働者にとっては地獄で、2000万人を越える労働者が年収200万円台の低賃金での生活を強いられている。日本の労働者の賃金は欧米各国やお隣の韓国も下回っている。

 

強欲な資本は、日本の労働者を搾取するだけでは飽き足らず、さらに低賃金な労働力を外国から求め、技能実習生制度を作り上げ、様々な在留資格によって外国人労働者が就労している。

 

愛知県の外国人技能実習生は3万8283人(2019年6月末現在)で、全国1位。県内に在留する外国人数は27万2855人(同前)で、全国2位となっている。

 

自民党政権は、難民の受け入れは頑なに拒みながら、資本の要求に応じて労働力の受け入れを拡大してきた。技能実習生として日本で〝技能〟を習得する目的でブローカーに多額の斡旋料を支払い借金を背負って日本に来ても、劣悪な労働条件である。

 

少し前には岐阜に技能実習制度で就労した会社の残業代の時給が300円という信じられない低賃金を悪びれることなく支払う悪徳中小企業やパスポートを取り上げ、パワハラ、セクハラが横行する実態が幾度となく暴露されてきた。

 

とりわけコロナ感染拡大が深刻化する中で倒産や実習生の解雇、賃金未払いが急増している。技能実習制度を法的制度として日本政府が成立させながら実際の運用は「監理団体」(非営利が建前)が行い(天下り先であり、利権の温床にほかならない)、技能実習生受け入れの96・6%が監理団体経由で、利用している企業の半数が19人以下の中小零細企業である。

 

このことからも明らかなように、求人募集をしても人が集まらない会社(給料が安かったり、仕事がキツかったり)が、手っ取り早く働き手を確保する手段として、技能実習制度を利用しているのが実際のところである。

 

 その中小零細企業は自民党の支持基盤であり、低賃金と劣悪な労働条件で労働者を過酷に搾取することによって経営を維持している。前近代的な労務管理や後れた設備による低い生産力は低賃金労働を生み出す温床である。

 

 労働者は外国人労働者であろうが日本人労働者であろうが、技能実習生や非正規労働者を、一切区別することなく資本に搾取され収奪されている存在に変わりはない。共に仲間として認め合い連帯して搾取に立ち向かわなければならない。(愛知 古川)

 

(愛知支部6月ビラより。一部修正)