愛媛県新居浜市で闘う仲間から、歴史修正主義歴史教科書採択阻止に向けて、前哨戦の報告が送られてきましたので紹介します。

 

新居浜教育委員会の恣意的な採択方法変更を追及!

――育鵬社版中学歴史教科書採択阻止の前哨戦として

 

去る 11/6、私もそのメンバーとして参加している「教育の問題を考える東予の会」(以下東予の会と記す)は新居浜情報公開審査会(以下審査会と記す)にて意見陳述を行った。

 

2015 年に「東予の会」は新居浜市教育委員会に情報公開請求(教科書採択手続き変更に関する公文書を公開せよ)を行ったが、「不存在」と却下された。それを不服として新居浜市情報公開審査会に審査請求を行ったものである。

 

分かりやすく裁判に例えれば、第一審で敗訴し、第二審に持ち込んだ形である。少し違うのは、審査会の前段階で審理担当職員が新居浜市教育委員会と東予の会双方から意見聴取して「意見書」を作成し、その「意見書」を審査会や、先の双方にも提示する仕組みがあることである。

 

問題はその審理担当職員は新居浜市教育委員会所属の市役所職員であり、肩書は「新居浜市教育委員会事務局次長兼社会教育課長」である。

 

他の納税課や建設課などならこの審理担当職員は全く別の部署の職員が担うが、なぜか教育委員会関連の情報公開請求に関しては「身内」が担うという不思議な仕組みである。

 

市の言い分は、教科書採択は学校教育課でありこの部署でない社会教育課の職員で任務は果たしうる制度になっているとのことで、判然としないが条令に明記されているので仕方がない。

 

客観的な判断を期待したが、案の定だ。審理担当職員の「意見書」の結論は「新居浜市教育委員会の不存在決定」支持だった。ただ、後述するように、「今回はしかたないが、今後は改めるべき」と良心を示した。

 

さて、我々が問題にした採択手続きの変更とは「私の評価表」(=現場教師の採択に関する意見書」そのものを削除したことである。

 

全教員に対象教科書の検討を義務づけ、意見を教委作成の書式「私の評価表」(第一位、第二位の教科書会社名とそれぞれ 10 項目にわたる観点を記載する)を廃止し、各校長作成の「学校の評価表」のみ作成に変更。「学校の評価表」は上位 2 点のみで観点記載なし、となった。校長の恣意的な判断がなされても検証できない。

 

意見陳述ではこの発言に続いて、「私の評価表」が廃止された後、各教員は教科書展示会での各教科書についての評価をどんな形で表現してきたのかが客観的に問われたのである

 

中学校では国語、理科、社会(地理、歴史等)各教科の免許を持った教師が担当する教科書をその専門性で評価し、「私の評価表」でない形で何らかの文書を作成し、教務主任や校長との協議に臨んだか、それとも口頭のみで意見具申したかは不明であるが、中学校長は各教科全ての免許を持っているとは現実には考えられず、その際「専門性」はどう担保されて「学校の評価表」が作成されるのか不明である。

 

教育委員会は答弁書で「私の評価表」はメモ書きの性質で廃止しても問題ない、廃止は重大なことではないと言っているが、納得できない。十分な調査研究や審議を尽くす観点から、「私の評価表」は拡充されても、無くしてしまうことは考えられない。

 

「学校の教科表」が上位 2 点のみで専門的な観点記載なしで済んできたのは、「私の評価表」が評価項目を記した選定理由を伴ったものであるからこそ、結果だけの記述で済んでいるということだ。小中学校教員の意見の肝心なものは「私の評価表」だったことを示している。

 

廃止後は「学校の評価表」のみを採択委員会に提出となった。如何なる観点で数種類(歴史なら8社)から2点を選んだか、専門的な観点の後付けがそもそもできないように改悪されている。

 

採択資料としては「学校の評価表」だけでは不適切かつ内容的に不十分である。「私の評価表」を廃止したことは誤りであり、その処分(廃止した行為)を行った経緯は検証されなければならない。

 

なお、審理担当者の意見書では、従前から継続して取り組んできたこと(=「私の評価表」のこと)を何らかの理由変更する場合は、その過程を問われた時は対応できる体制の構築を求めたいとある。この方の良心は理解するものの、「公文書ではない」との見解で情報公開に後ろ向きの教育委員会学校教育課に追随することなく、逆に諫めることが必要だったと思う。

 

日本をはじめ世界の資本主義国家にとって、資本の利益のために「命を投げ出すことのできる兵士の存在」は必須である。戦前日本では学校教育がそのために大いに利用され、戦後も特に安倍政権で教育基本法改悪や歴史修正主義教科書の採択推進がなされた。

 

安倍亡きあとも、教育の反動化が現在進行中であることは周知の事実である。岸田内閣の木原稔防衛相は今国会で自身の国会事務所に「教育勅語」掲示していた事実を野党議員に指摘された。

 

「教育勅語」には以下の件くだりがある。現代語訳では「ひとたび国家の一大事(戦争)になれば勇気を奮い立て身も心もお国のために捧げることで・・云々」。

 

来年は教科書採択年である。育鵬社版をはじめとする歴史修正主義歴史教科書採択阻止にむけ、まずは前哨戦の報告である。 (愛媛FY)