皇族の男系男子も皇族に

──有識者会議、皇族維持策を画策

 

皇位継承の在り方に関する有識者会議は先月、中間報告として「今後の整理の方向性」をまとめた。

 

本来の課題である皇位継承問題については、「歴史や伝統は大変重い。国家の基本に関わる事柄で制度的な安定性がいる中での大きな仕組みの変更は慎重でなければならない」として、議論を先送りした。

 

皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めているが、2005年当時、皇位継承資格者は、今の天皇徳仁、秋篠の宮、常陸宮と現在と同じ数の3人であり、皇位継承を議論した小泉政権の有識者会議では女性天皇、女系天皇を容認する報告書を出したことがあった。

 

しかし、その後秋篠宮の長男悠仁が誕生して、皇位継承問題の緊急的対応という危機意識も薄まった。有識者会議は皇位継承については、悠仁の年齢や結婚などの状況を踏まえたうえで判断すべきではないか、と述べている。

 

有識者会議は皇位継承問題を先送りにし、皇族数の確保を喫緊の課題としている。皇室典範では女性皇族は一般の男性と結婚すれば、皇室を離れることになっており、現在未婚の女性皇族は6人しかいず、いずれ皇族は少なくなる。定数の皇族がいなければ、摂政、国事行為の代行、皇室会議の開催など、法律が定める皇室としての活動が難しくなるからというのがその理由である。

 

その対応策が次の3つの案である。

第1は、女性皇族は結婚後も、皇族として残る。

第2は、戦後に皇族を離脱した旧皇族の男性が養子縁組で皇族となることを可能にする。

第3は、2の案でも足らない場合は、旧皇族の男系男子を法改正によって皇族にする。

 

皇族不足の対応が問題になっているのは、男系天皇にこだわってきたことの結果である。右翼反動派は、「男系の血統、血筋を継ぐ者のみが皇族となり、皇位継承者になる」というのは日本の天皇制だけであり、日本の伝統だと言ってきた。そのため天皇そうだが国事行為の代行など天皇体制度を支える皇族の数の不足という問題にも直面することになったのである。

 

この問題の対応策として有識者会議は旧皇族の男系男性の皇族復帰を提案している。しかし、旧皇族といっても、戦後皇族から離脱し、すでに80年近くたった。実際の対象となるのは一般の国民として生活してきた旧皇族の子供や孫たちだろうが、そんな彼らを法律によって皇族に据えることは新たな差別を生み出すことである。

 

そもそも、男性であろうが女性であろうが天皇自体が、性別、社会的身分、門地による差別を禁じた憲法に違反する存在である。戦前、天皇は中国侵略、日米帝国主義戦争で兵士として戦場に狩り出し、3百万余の兵士の生命を奪い、幾千万の国民に被害をもたらし、また中国をはじめとするアジア諸国の人民の生命、財産を奪うなど計り知れない損害を与えた戦争責任者である。にもかかわらず、戦後天皇はその責任をとろうともせず、生き延び「国民の象徴」として存在している。

 

日本の支配階級である大資本の勢力にとって、天皇は国民を国家の下に統合し、資本の支配を維持・安定させる道具としての役割を担っているのである。保守反動派は、憲法を改定し差別の象徴である天皇を「国家元首」の地位に祭り上げ、支配の強化を狙っている。

 

皇室を支える経費は今年度で約250億円、全て税金である。自ら働かず、国民の血税に寄生している天皇制など即刻廃止すべきである。  (T)