コロナ禍が明らかにした資本主義の危機

 

 安倍政権に退陣を迫り、
     新しい社会主義の時代を切り開こう

 

新型コロナウイルスCOVID19感染の蔓延は、新規感染者の数が4月11日に700人近く確認され、それをピークに徐々に減少し、5月25日には緊急事態宣言が解除され、ようやく終息に向かいつつあるかである。安倍首相はコロナ収束に胸を張って、「全面解除後の次のステージへ、力強い一歩を踏み出す」というが、その後も新規感染者数が20~40人が続いており、収束する状態にはなっていない。この間のコロナ禍の社会経済的影響を明らかにし、社会の根底を支えている労働者・働く者が、これからの社会を如何に展望するかを検討してみたい。

 

コロナ禍が生み出した恐慌の実態

 

コロナ禍、コロナ危機は、まず、新型コロナウイルの感染と感染拡大、そして感染した患者の治療が追い付かない医療崩壊である。そして感染を回避・予防するための人々の外出自粛と、政府の外出及び営業自粛要請などの政策によって、社会経済活動が停滞し、企業は経営難に陥り倒産・休業し、労働者が失業、休業などで生活困難に陥る恐慌状態になっている。

 

利益の低迷

 コロナ禍が企業に与える影響は深刻であり、1~3月期の法人統計企業調査によると、金融機関を除く全産業の経常利益は前年同期比32%減少した。リーマン・ショック後の2009年7~9月期(32.4%減)以来の下落幅であり、再び恐慌が資本主義経済を襲っているのである。宿泊・飲食などのサービス業、卸売業、小売業などの非製造業が32.9%減と減益幅が大きく、自動車とその関連部門の製造業が29.5%減である。

 

売上高の減少

 売上高については、上場企業の1~3月期は前年同期比で7%減、その内情報・通信、空運は同期比20%台、ゴム製品、輸送用機械(自動車など)が10%台の大きな落ち込みであった。4、5月のバス事業(路線バス、高速バス、観光バス)は前年比99%減、4月の空港の旅客数は関空で97.3%減、大手百貨店4社の5月の売上高は6~8割減、外食産業の4月の売上高は39.6%減、工作機械の4月の受注額は48.3%減、国内自動車大手8社の4月の世界生産は6割減、鉄道では乗客が激減しJR西日本では4月の在来線特急や山陽新幹線利用者は90%減、空運ではJALANAの3月の旅客数は国内線で6割減、国際線で7割減、3月の全国のホテルの稼働率は31.9%などであった。

 

 これら上場企業から仕事を受ける中小零細企業は、「売上が激減し、先が見えない」状況にある。売上が蒸発し経営難に陥った宿泊、飲食、アパレル関連、路線バス、農園、派遣会社などのサービス業では、コロナ関連で倒産している。

 

GDPでみると1~3月期は年率換算で3.4%減であり、4~6月期は20%超の減の予則である。事態は深刻化している。

 

倒産210件、完全失業者178万人

コロナ関連倒産(負債1千万円以上)が6月3日時点で210件を超えた。上場企業はアパレル大手レナウンのみで、従業員10人未満がほぼ半数である。倒産企業の従業員は少なくとも7700人にのぼり、アルバイトなども含めると数倍の雇用が失われている。

 

宿泊、飲食、アパレル関連などが約4割を占め、路線バス、農園、派遣会社などにも広がっている。4月末で廃業したバス事業者は19社である。2008年のリーマン・ショック時は、大企業への影響が大きかったが、このコロナ禍では大半が中小で、特に中小のサービス業のコロナ禍関連倒産が目立っている。

 

4月の完全失業者は178万人(完全失業率2.6%)、前月から6万人増えた。解雇によって多くの労働者が街頭に放り出されている。

 

コロナ禍前から進んでいた危機

1990年代のバブル崩壊以降、鉄鋼、家電などの生産的産業はすでに次第に衰退していたのであり、観光・宿泊、娯楽産業、小売などの消費的な非生産的サービス産業に資本が生き残りとして求めたのである。

 

その中で生産的産業では、自動車産業が日本を牽引してきたのであるが、過剰生産能力を抱えた日産自動車は、2020年3月期は純損失が1千億円近くの見通しから6712億円に膨らんでいる。ソフトバンクは投資ファンド事業が大きく足を引っ張り純損益9615億円の巨大赤字を出した。パナソニックは減収減益、地方銀行(上場76社)も純利益が前年比1割減である。

 

鉄鋼もコロナ禍以前に過剰な生産能力を露呈し、日本製鉄は呉と和歌山の高炉休止、JFEも京浜地区の高炉休止などを決めている。コロナ禍による鉄鋼の需要減が進めば、さらなる生産能力の削減に追い込まれ、人員削減も避けられないことになる。

 

解雇・雇止め1万6723人

コロナの影響で解雇や雇止めにあった従業員は、5月29日時点で1万6723人である。宿泊、タクシー・観光バスなどの旅客運送業、製造業、飲食業、小売業などで働く人、そして介護労働者、学童保育の指導員、英語塾などの教育関連従事者などに失職は広がっている。

企業は倒産に至らないとしても経営を守るために、労働者を解雇する。25日~29日の新たな4811人の失職者のうち、非正規労働者は2366人であり、非正規労働者で失職の割合が高い。非正規労働者は前年同月より97万人減り、このうち女性労働者が71万人である。正規労働者も容赦なく解雇の憂き目に合っているが、失業のしわ寄せは、非正規労働者、女性労働者に多く寄せられている。

 

休業597万人

会社から仕事を休まされ休業を余儀なくされている人は、4月で597万人にのぼる。2008年リーマン・ショック直後のピーク時には153万人であり、今回はより深刻である。日雇い労働者、派遣会社に登録して日雇いの仕事をしている労働者、登録型派遣労働者(例えばツアー添乗員)など非正規労働者は、仕事がなくなれば生活費が稼げなくなり困窮する。特にネットカフェなどに寝泊まりする人は、さらに住いの困難が襲い掛かっている。

 

雇用統計に入らない、上記の業種や文化スポーツ関連のフリーランスなどの自営業者もイベントや公演などが中止になり休業に追い込まれている。

 

就職難・新規求人数前月比22.9%減

4月の雇用統計では、新規求人数は前月比22.9%減で、主要産業別でみると宿泊・飲食サービスが47.9%、製造が40.3%であり、生活関連サービス・娯楽、教育・学習支援、学術研究・専門・技術サービス、情報通信、卸売・小売、運輸・郵便、医療・福祉などで新規求人数が激減している。仕事がしたくても仕事がないのである。

 

生活保護206万人

 これらの倒産、解雇・雇止め、休業などで生活費を得ることが困難となり、生活保護に向かわざるを得ない状況にある。特定警戒13都道府県では、生活保護申請が前年と比べて3割増え、感染予防で窓口職員を減らしているなかで、申請相談が急増している。2020年2月時点の生活保護利用者は206万人であるが、労働者が働く場所が失われているのであり、生活困窮に陥って生活保護を求めざるを得ない人が爆発的に増える事態なのである。

 

資本主義が生産力を発展させるという歴史的な使命をとっくに終え、社会の根底を支える労働者に、生活困難をもたらす状態に追い込むようになっていることを、再び三度明らかにしている。

 

本当の解決は資本主義社会の根本的な社会主義的変革しかない

 

コロナ禍は飲食、観光、宿泊・ホテル、スポーツ、娯楽関連、小売、医療、介護、教育などのサービス業や、タクシー、観光バス、航空、鉄道などの運輸業、自動車産業及びその周辺の製造業を直撃し、そこに働く労働者が、失業、解雇、雇止め、休業、就職難の厳しい状況に置かれ、生活困難に追いやられている。我々は如何にこの状況を解決すべきか。

 

資本主義の危機が汎世界的に広がっている

 IMFは2020年の世界経済見通しによるGDPの年間増減率は、全世界で-3.0%(2019年2.9%)、先進国で-6.1%(同1.7%)、新興市場国と発展途上国で-1.0%(同3.7%)、それに含めている中国を取り出すと1.0%(同5.5%)と、総ての国で経済成長率が前年より低下し、中国、インド等を除くと、マイナスになると予測している。

 

ILOの分析(5月27日)では、勤務先の休業などで世界の6人に1人の若者(すなわち働く世代)が働けない状態に陥っているとし、その要因として、感染拡大の影響を最も受けた、小売、宿泊、製造、飲食の業種で若年層の労働力の割合が高いことをあげている。これは、将にここに述べた日本の状況であり、世界共通である。

 

安倍政権の緊急経済対策

この資本主義の世界的な危機に対して、日本では102兆円を越える戦後最大の膨張予算となる2020年度の当初予算に加え、コロナ禍に対する緊急経済対策のための総額25兆円6914億円の第一次補正予算と31兆9114億円の第二次補正予算が成立した。

 

労働者を救済するものとしては、雇用調整助成金の企業に対する支援が、一次補では690億円、二次補正で4519億円に積み上げられ、そのなかでようやく労働者が直接申請して給付されるようになった。ひとり親世帯の支援は1365億円である。労働者の救済になるものはこれだけであり、全く不十分である。

 

肝心の医療体制の強化では、コロナ禍による医療崩壊の最中にこそ、緊急の必要があった重症者の隔離病棟の配置やPCR検査体制の整備が、全く遅れたのである。

 

安倍政権が補正予算で重点が置いたのは、経営難に陥った企業への給付金や融資である。企業を守り、景気を刺激する消費を喚起しようとするもので、資本の体制の維持を図るものに重点が置かれている。

 

観光などによる人の移動、そして人と人との接触・接近は感染を広げることになり、観光などの消費は、いくら観光振興策(「Go Toキャンペーン」など)で消費(観光)を刺激しようとしても、そもそもコロナ禍によって消費ができない状況にあり、消費したくても消費できないのである。資本にとってはこれらの産業を救うことは、資本の体制を守るために必要であり、そのための救済策であるが、それは救済にもならないその場限りの弥縫策である。これらの産業は、人が集まってこそ成り立つ産業であり、政府が推奨する「新しい生活様式」では、その集まる人が半分になって経営が成り立つかは難しいのである。補正予算に盛り込まれた給付や融資で企業が救われるとは限らず、このままコロナ禍が続けば、さらに支援が必要になるかも知れないのである。

 

これらは公的債務を増やすだけで本当の解決にならない。アベノミクスで既に破綻している日本社会の経済をさらに破滅に導くものである。コロナ禍と闘うためにも、安倍政権を倒すことが焦眉の課題である。

 

これからの社会の展望と労働者の闘い

 

1990年代以降の不況の深化とともに、資本が生き残りとして求めた資本を移行していったのが、観光・宿泊、娯楽産業、小売などの消費的な非生産的サービス産業である。それらと共に航空、鉄道、バス、タクシーなどの運輸産業が発展した。そして、高齢化社会の到来とともに必要性が増してきた介護・医療など社会福祉関連のサービス産業が勃興した。生産的産業では、自動車産業が日本を牽引してきたのである。

 

観光や宿泊、飲食業、娯楽などのサービス業は、衰退する国内の需要だけでは発展することができず、東京ディズニーランドやUSJ、さらにはオリンピック、万博、そしてIR誘致などで外国人観光客を呼び込むことで起死回生を図ろうとした。これらが今回のコロナ禍で打撃を受けたのである。年3千万人を越えた訪日外国人観光客は現在皆無になっている。資本の危機を根源として成長したこれらのサービス産業は、資本の危機を救うことはできないことをコロナ禍は明らかにした。

 

介護・医療も費用の増大と人手不足をコロナ禍がさらに助長し、介護崩壊、医療崩壊の徴候を呈したのである。介護・医療も私的資本の経営では行き詰まりをみせている。生産手段を社会の共有とし、社会の働くことができる全成員が共同体の一員として、介護・医療を担わなければ解決の道はないのである。

 

金融緩和政策もうまくいかず、財政政策では公的債務を際限なく膨張させるだけで、打つ手を失くしてきた資本主義、それを支える安倍政権は、コロナ禍によって非生産的なサービス産業でも行き詰り、そして今や自動車などの製造業も販売数が減少し過剰生産を露呈し、危機を深めている。

 

労働者は雇用の確保や生活の保障を求めて、資本家や政府と闘わなくてはならない。それは私的資本が利潤を上げる経営を基礎とする資本主義社会において、労働者は常に厳しい状況に置かれ、解雇・雇止めにあい、休業を余儀なくされ、収入を絶たれ生活困難に直面するからである。しかし解雇、人員削減となった生産の縮小は、利潤のさらなる獲得をめざした資本が、抱えることになった過剰生産がもたらしたものであり、本当の解決のために、私的経営で営まれている資本主義的生産の変革に進み、生産手段の私的所有から社会的共有に移し、生産を真に社会的なものにする、資本主義を乗り越える闘いに進まなければならない。

 

今こそ労働者は労働者党に結集し、野党に頼るのではなく独自の闘いを組織し、資本の維持に汲々とする安倍政権に退陣を迫り、新しい社会主義の時代を切り開かなくてはならない。

 

先進20カ国は世界で900兆円の資金を投入することにしている。世界の公的債務は昨年末で7500兆円に達しており、新たな公的債務はこれに上乗せされる。世界的なインフレでしか解決できないような時限爆弾を抱え込む、汎世界的な資本主義の危機を呈しているのである。

 

世界の労働者は連帯して資本主義社会の根本的変革を志すべきときがきている。

 

(大阪・佐々木)