沖縄の『海つばめ』読者から名護市長選について投稿があり、興味深い内容ですので3回に分けて掲載します。合わせて、翁長知事が辺野古の埋め立て承認を取り消した当時(2015年10月)、『海つばめ』1262号の「主張」で、沖縄の米軍基地をめぐる政治闘争について書かれた論評を紹介します。
一歩後退迫られる辺野古新基地建設反対の闘い
――名護市長選の敗北――(1)
全国的にも注目を集めた名護市長選は、辺野古新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」の推す現職の稲嶺が、基地建設を推進する、自民・公明・維新の推薦する渡具知に3458票差で敗北した。
安倍首相は早速、「市民の理解をいただきながら、最高裁判決に従って進めていきたい」と述べ、普天間基地の辺野古移設推進の民意が得られたかの発言をおこなったが、あたかも、これまで民意を無視せず尊重してきたかである。
90年代の名護市民投票や県民投票による普天間基地の辺野古への移設反対の意思表明、あるいは、この10年余の市長選・知事選・国政選挙における自公推薦候補の度重なる敗北にも拘らず、自公政府は辺野古移設に固執し、新基地建設を強行的に推し進めてきたのだ。自公政府に都合の悪いことは徹底的に無視し、都合の良いものだけを民意などというのはいったいどの口が言うのだ?!
今度の名護市長選挙に典型的にみられるように、沖縄の特に市長選や県知事選は、沖縄を米軍・自衛隊の軍事基地の島として置きたい自公政権が全面的に介入するというのが当たり前となっている。
また、安倍自公政権の狙いは、11月に予定される知事選挙での「オール沖縄」の翁長県政をひっくり返すことであり、名護市長選はその前哨戦として並々ならぬ決意であらゆる手段を使ってきたのだ。
自民党は選挙「応援メモ」なるものを作って、〈NGワード…辺野古移設(辺野古の『へ』の字も言わない)〉、〈オール沖縄側は辺野古移設を争点に掲げているが、同じ土俵に決して乗らない!〉などと指示を出していた。これは、基地建設には反対も多いといわれる沖縄の創価学会員対策であるとともに、徹底した争点外しの戦術である。まさに選挙資金から戦略・戦術まで安倍政権丸抱えなのでる。
渡具知陣営は、討論会も拒否して、基地問題について、「県と国の裁判の行方を注視する」とだけ繰り返し、「現市政は一つの問題にこだわりすぎている」とか、「経済の停滞を招いた」などとデマを拡げたのである。軍事基地建設一辺倒の偏向した安倍自公政権丸抱えのお前が言うのか?!というところである。渡具知は、こうした安倍自公政権丸抱えの操り人形以外にはなりえない。
安倍自公政権は、菅官房長官や二階幹事長を繰り出し、建設業界向けには公共事業の推進をするとのアピールを繰り返し行い、三原じゅん子や小泉進次郎といった「タレント議員」を入れて、名護市が「ゴミを16分別」している事を槍玉に挙げて、「政策論争が一番大事」などとの、意味不明でデマまがいの稲嶺市政攻撃の演説を繰り返しさせたのである。
また、安倍自公政権は、告示前日、渡具知が当選すれば、稲嶺市政発足後の2010年から名護市で支給が止まっている基地再編交付金の交付対象とする方針を打ち出したが、これは基地建設推進のために作られた悪質な「アメとムチ」の制度だ。かつて岩国市庁舎を建設途中に立ち往生させ、当時の市長が落選したことでも知られているものだ。
この外に、年数十億円といわれる内閣官房機密費からもカネが選挙に投入されたことが疑われている。これは使途のチェックができないカネだ。この官房機密費が名護市のこれまでの選挙で実際に使われた事について、週刊金曜日の記者が「名護市に巣くう基地マフィア(辺野古新基地建設推進派)」の実態に焦点を当てた取材をして、多くの証言を元にまとめた本「国防政策が生んだ沖縄基地マフィア」の中で暴いている。その中で「政府の人間とホテルの一室で会い、紙袋を受け取った。領収書はなくてサインだけ。」「選挙中は毎晩のように懇談会をやらせた。1日に10件も20件も居酒屋に費用を置いていった。」「創価学会は金は受け取らなかった。だから食事や飲みにつれて行って、その代金を俺が払うようにした」などの元名護市議の生々しい証言が記録されている。自民党政府が税金を不法に使い、卑劣な違法選挙を展開してきたという事がよくわかる。