労働の解放をめざす労働者党愛知支部発行〝春闘〟特集の『海つばめ』号外2月号の記事を紹介します。
★ 岸田・経団連・連合は22春闘をどう闘おうとしているのか?
★資本家団体・経団連は賃上げと引き換えに労働者に何を押し付けようとしているのか?!
★それは、生産性向上=労働強化であり、成果主義賃金であり、ジョブ型雇用であり、同一労働同一賃金を名目とした手当削減だ!
〝官製春闘〟の旗を振る岸田、絶望的な格差と貧困を生み出す非正規雇用の一掃が先決だ!
安倍政権から〝官製春闘〟に姿を変え〝賃上げ要求〟の旗振り役が労組から自民党政府にとって変わった。安倍が、賃上げ要求の旗振りを買って出たのは、安倍が労働者の労働条件改善を真剣に考えたからではない。
再び問題となっている政府統計の改ざんや集計方法を変えてまで、アベノミクスの成果として達成したかったGDP600兆円の「需要喚起策」のためである。安倍は賃上げを行った会社の税金を安くするアメを用意したが、賃上げ率は減少した。
岸田は、規制緩和の新自由主義に変わる「成長と分配の好循環」という全く無概念な「新しい資本主義」を説いて回り、「賃上げ3%超」を訴え、保育や介護労働者の賃上げ9千円の実現を約束したーー僅か9千円の賃上げで、しかも予算措置を行っても払うか払わないかは経営者しだいのいい加減なものーー。安倍に習って岸田も、賃上げを行った企業には税金を安くするおまけを付けたが、そもそも赤字で法人税を払っていない企業は法人企業全体の65.4%もある。
好業績を上げ、人手不足によって利潤確保の機会を逃している企業にとっては、3%程度の賃金上げで資本が必要とする人材を確保することができれば、安いコスト負担でしかない。
「新しい資本主義の起動に相応しい賃上げを望む」経団連の本当の狙いは、3%賃上げを叫ぶ岸田も、息を吐くように嘘をついた安倍と何一つ変わるところはないが、資本家団体=経団連の春闘方針はいかなるものなのだろうか?
岸田からのパスを受けた資本家団体=経団連の十倉雅和会長は、「収益・成果を働き手に適切に分配すべく、企業の責務として、賃金引き上げと総合的な処遇改善に取り組むことが非常に重要であると考えています」(1/25フォーラム)、「新しい資本主義の起動にふさわしい賃金引き上げが望まれる」と宣言し岸田にエールを送った。
要するに、経団連をはじめ経営者は、なによりもDX(デジタル変革)、つまりAIやIoTや半導体等の先端技術分野の『敗戦』から立ち直るためにと、賃上げや岸田の言う『人への投資』(『海つばめ』1418号参照)を行い、それらによって技術を持つ人材を確保しつつ賃上げによる個人消費拡大を期待するのである。(略)つまり、経団連にとっては、労働者の賃上げに配慮するが、なによりも世界に伍して闘える日本資本主義(共産党の志位がいう「強い経済」)の再構築こそが必要だと強調するのである。これを達成するためにと、経団連は国内投資や賃上げのための財政的支援(22年度政府予算案を見よ)を要求し、かつ賃上げが消費に回るための方策ーー『将来の暮らしの不安を解消するための社会保障制度の構築も急務であり、それが出来なければ成長は成し遂げられない』(十倉会長)ーーを注文するのだ。(『海つばめ』1419号「資本の春闘方針を打ち破れ」から)
彼らが賃上げを容認する理由を先の「海つばめ」の引用で明らかにしたが、更に見逃してはならないのは、賃上げ容認と同時に「働き方改革や社員のスキルアップが国際的に低迷している日本の生産性向上につながる」と強調していることからも明らかなように、「働き方改革」や「社員のスキルアップ」で「国際的に低い(OECD加盟38カ国中23位「日本生産性本部」)生産性を向上」させることを狙っている。
賃上げで労働者に譲歩し減少した利潤を、労働密度を高めて〝脇目を振らずに働け〟と、生産性向上によって、賃上げで減った利潤以上むしり取ろうというのである。
「働き方改革」の看板のもと「ジョブ型雇用」=『職種や仕事内容、必要な資格等を会社が事細かに規定する賃金体系』によって賃金を決定する方向に舵を切ろうとしている。
資本は労働者個人に達成すべき目標や仕事内容を明示化することによって労働者間の競争を煽り団結を切り崩し、労働者が孤立した個人として経営側に対抗することを余儀なくさせる。抵抗の手段を奪われ手放した労働者は、自ら資本の軍門に降るか〝戦力外〟の通告を受けるかの選択しか用意されてはいない。
現在〝ジョブ型雇用〟は大企業やITベンチャー企業が中心でまだ一部にとどまっている。しかし表にあるように今後急速に導入が進もうとしている「ジョブ型雇用」を都合よく解釈し、支払う賃金総額を変えることなく〝分配〟を変えて労働者の分断を図り、トヨタに習って「成果主義賃金」制度に移行すると、うそぶく資本家が出てくるのは確実である。
既に「同一労働同一賃金」を逆手にとって、資本は各種手当の廃止を行い賃金総額の引き下げ、労働条件を非正規労働者の労働条件に近づける悪巧みを画策している。
「同じ資本家団体でも経済同友会の櫻田代表幹事は〝官製春闘〟に対して「いつまでやるのかと正直感じる。『官製』によって『新しい資本主義』が出てくるものではない」と経団連の立場と違う見解を表明した。
これは経団連が大企業を中心に組織され国家との一体化を求められているのに対して、同友会が経営者個人によって組織されているという違いで、正直な〝本音〟が語られている。
労働者にとっては、経団連だろうが同友会だろうが、労働者に対する搾取労働を企業活動の基礎とする独占資本や経営者の意見の違いなどどうでもいいことである。
我々が要求するのは、搾取労働の廃絶・労働の解放である。
資本に屈服し岸田にすり寄る連合や立憲・共産党に替わる闘いを準備しよう!
岸田や経団連が春闘に向けて新しい資本主義に相応しい賃上げを叫んでいるが、肝心の労働組合=連合の動きはどうなっているのだろうか?労働組合の組織率は17%程度で、組合に組織されていない多くの労働者は賃上げはおろか、賃下げすら当たり前である。
とりわけコロナ禍の中で運輸交通、宿泊観光業や商業では多くの労働者が首を切られた。好調な自動車産業も半導体不足や部品の供給が滞り、EV化に向けた再編と相まって、二次・三次の下請け会社を中心にリストラが進んでいる。
VWを上回って世界最大の自動車メーカーになったトヨタの労働組合は、今年の春闘(春季労使交渉と呼ぶ)において、平均賃上げ要求を行わず「職種」「職位」毎に要求するようになったという。
トヨタ労組は、19年以降ベアを非公開とし春闘の表舞台から姿を消し、成果主義賃金制度が昨年から本格的に導入された。衆院選挙では組織内候補で現職の議員の立候補を取りやめ自民党に議席を譲り渡した。同じ自動車総連のホンダ、日産、マツダ労組は賃上げ要求金額を公表しているが、公表したからと言って、会社側と慣れあう労資協調は揺るがない。連合が開催した「2022年新年交歓会」で、岸田、後藤厚労相、十倉経団連会長ら政府・資本家団体から挨拶を受けたが、立憲の挨拶を求めず波紋を呼んだ。
700万の組合員を組織する連合は、自民党・資本家団体との協調と連携を新年早々鮮明にした。労働者は、連合の様に自民党や資本家団体と慣れあうことをきっぱりと拒否しなければならない。
【長い間、労組の御用幹部共や共産党は、大幅賃上げで不況脱出や経済回復を叫び、さらには地域経済の活性化を実現するかに幻想を振りまいてきた。彼らは資本主義経済の不況脱出に協力するのであり、実際に経済回復に片棒を担ぎ協力してきたのだ。
そして、彼らは労働者の資本との闘いを経済回復の枠内に導き、逸らせ、資本との協調を促し、労働者の賃金闘争をぶち壊してきたのである。】(『海つばめ』1419号「資本の春闘方針を打ち破れ」から)
労働者の闘いは困難な中にある。コロナ禍が暴いたように、資本主義の中で格差と貧困は恐るべき状態になった。資本主義は歴史的役割を終え、新しい社会への転換は必然である。それは岸田が唱える「新しい資本主義社会」という弥縫策とは真逆である。資本主義体制の根本的な変革(人はそれを〝革命〟と呼ぶ。)資本家階級の支配を一掃し、搾取労働を廃絶し生産手段を共有する労働の解放された社会である。
愛知支部主催 第21回「資本論を読む会」のご案内
★2月20日(日)13時15分~15時
★会場 昭和生涯学習センター
★地下鉄「御器所」桜通線・鶴舞線、下車6分
★連絡先 070-8959-1147 古川